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16世紀、スコットランド女王メアリー1世(メアリー・スチュアート)が送った57通に上る暗号化された手紙が偶然発見され、日本人研究者ら3人の暗号解析チームによってこのほど解読された。メアリーの研究者は「文学的にも歴史的にも大きな衝撃になる」と称賛している。
英BBCによると、手紙はメアリー1世がイングランド女王のエリザベス1世によりイングランド・スタッフォードのタットベリー城で幽閉された後、1587年2月8日に処刑されるまでの19年間に書かれたもの。その存在は長い間、すでに失われたとされてきたが、フランス国立図書館の膨大なオンライン公文書の中から見つかった。
57通の書簡には、約5万語の未知の単語が含まれていた。そこで、コンピューター技術を駆使しその結果、ついに解読された。手紙の多くは、1578年~1584年にメアリー1世がロンドンのエリザベス1世の宮廷に駐在するフランス大使ミシェル・ド・カステルノー・モーヴィシエールに送ったものだ。
「これは驚くべき研究結果で、今回の発見は文学的にも歴史的にも大きな衝撃になる」と、メアリーに関する研究で知られる英ケンブリッジ大学のジョン・ガイ氏はそう語った。
1542年に生まれ、1568年までスコットランドの女王だったメアリーは、1559年から1年間、フランスの女王でもあった。テューダー朝初代のイングランド王ヘンリー7世のひ孫として、特にカトリック教徒の間では将来のイングランド女王になることが望まれていた。
だが、3度の不幸な結婚と、相次ぐ政治的誤算により、メアリーはスコットランド女王を廃位されてイングランドに亡命。人生の最後の19年間をいとこであるイングランド女王エリザベス1世の下で幽閉の身として過ごした。1587年2月8日、そのエリザベス1世を殺害する陰謀に関与したという疑いで斬首刑に処せられた。
悲運により、メアリーはカトリック教徒の殉教者となり、これまでずっと歴史家や小説家、映画製作者の関心の対象となってきた。近年では2019年の映画「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」がメアリーとエリザベス1世を描いたもの。アイルランド出身の女優シアーシャ・ローナンがメアリーを、オーストラリア出身の女優マーゴット・ロビーがエリザベス1世を演じた。古いところでは1895年に、あの米発明家トーマス・エジソンが製作したサイレント映画「メアリー女王の処刑」という作品もある。
ドイツの劇作家フリードリヒ・シラーによる戯曲「メアリー・スチュアート」は1800年に初上演されている。
今回の暗号解読研究チームは、イスラエルのコンピューター科学者ジョージ・ラスリー氏、ドイツ人ピアニストのノルベルト・ビエルマン氏、日本人天体物理学者で歴史作家の友清理士氏の3人で構成され、いずれも熱心な暗号学者でもある。