注目ポイント
台湾人女性と結婚し、長年台湾在住ライターとして活躍してきた広橋賢蔵氏が、ついに台湾での帰化申請を突破した。右手には菊のご紋の日本国パスポート、左手には真新しい深緑の「TAIWAN」(中華民国)パスポートを握りしめ、日台双方の弥栄を願う筆者の胸中には「台湾で選挙に立候補する」という野望が雲のごとくわきあがってきた。いずれ総統選出馬も視野に、まずは手っ取り早く里長(町内会長)選挙だ!しかし思わぬ落とし穴が…
台湾語をマスターして、ワンステップアップ!
「中華民国」(台湾)に帰化したところで、筆者の台湾での生活も34年目に入った。とはいえそのライフスタイルはこれまでと比較しても大差はないのだが、出会った台湾人に対して、「自分は日本人として生まれたが、台湾の家庭にムコ入りして、今は帰化して“中華民国”籍だ」と紹介するだけで、どことなく、相手の反応が違ってきたように感じている。果たして同胞として認められているだろうか⁇ 気になるところだ。
台湾社会を上手に渡り歩くため、新参者の自分が温かく受け入れてもらうには、どうしたらいいのかをつらつら考えてみた。そのひとつが「ホーロー(福佬)話(ウェ)」と呼ばれる中国語方言の中の福建・閩南語に近い「台湾語」の活用だ。
みなさんご存知の通り、台湾で話される標準語は「国語」「普通話」と呼ばれる華語、すなわち北京官話(マンダリンチャイニーズ)なのだが、これは戦後、大陸からやってきた「中華民国」が台湾を統治するようになってからのこと。戦前はもちろん日本語が公用語だった。しかし、それ以前からの土着の言葉としては、日本時代に高砂族と呼ばれた「原住民」(先住民)各部族の言葉や、台湾客家語などの少数言語を除き、主に全島で上記「台湾語」(ホーロー語)が話されていて、特に台湾中南部では、今も高齢者を中心とする多くの人々にとっての母語となっている。
よって、台湾語ができるかできないかで、周囲の評価は違うものになる。
これまで筆者はマンダリンチャイニーズしか理解していなかった。マンダリンが生活の中心言語である台北に住んでいる分にはそれほど不自由することはなかったので台湾語学習はスルーしてきた…というよりマンダリンとごっちゃになるので、あえて封印していたとも言える。
だから、全ての人が台湾語で話す場になると、とたんに寡黙になる。それに対しては多少の疎外感を感じていた。それは今も同じことだ。
そこで、ローカルな人たちの集まる茶荘などで台湾語の言い回しを教えてもらったり、日本統治以前から台湾に根付き、主に台湾語の礼拝が定着しているキリスト教長老派「台湾基督長老教会」に通って台湾語で聖歌を口ずさんだりしているうちに、少し話せるようになってきた。せいぜい、ここ1年くらいのことだけれど…。ときにかく習うより慣れろだ。朝市などは台湾語の会話が飛び交っているので、ちょうどいい会話道場にもなる。「ボクは日本人だが、台湾語を勉強しているので、もう一度ゆっくり話してください」などと話すと、あちらは面白がって、ナゾのスラングも含め、いろいろ伝授してくれたりするのだ。