2023-02-15 ライフ

熊川哲也さん 「バレエは普遍的な形式美」

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注目ポイント

ローザンヌ国際バレエコンクールで審査員を務めた熊川哲也さんが、swissinfo.chのインタビューに応じた。バレエ界の変化、ハラスメント問題、若手ダンサーへのアドバイスに関して、意見を聞いた。

上原 亜紀子

創立50周年を祝うローザンヌ国際バレエコンクール2023で、熊川哲也さん(50)が審査員を務めた。自身も1989年に同コンクールに出場し、日本人初の金賞を受賞しており、審査員を務めるのも3度目になる。熊川さんがバレエ界に足を踏み入れたきっかけとなったのは、14歳の時に参加した地元札幌のバレエ講習会での、スイス人バレエ教師ハンス・マイスターさんとの出会いだ。ドン・キホーテのソロを自主的にマイスターさんに踊って見せたところ、英ロイヤル・バレエ学校への留学をすすめられた。熊川さんはその後、英ロイヤル・バレエ団のプリンシパル(最高位)に昇格。英国から日本に帰国してからはK-BALLET COMPANYを創設。世界的にも類を見ないビジネスとして成立する芸術団体経営の成功例を示し、バレエ界をリードしている。

swissinfo.ch:熊川さんがバレエを始めた頃と現在を比べると、バレエ界でどんな変化が見られましたか?

熊川哲也:今も昔も変わりません。バレエというのは普遍的な形式美ですから。どの時代でもジュニアたちの意識は変わらないと思います。スマートフォンが登場してからも、情報へのアクセスの仕方には変化があったかと思いますが、アプローチ自体が変わったわけではないですし、34年前にこの地に立っていた自分を思い出しても、今の子供たちと変わらぬ緊張感を持っていた。それは時代を経ても変わらないことです。

もちろん、コンクールのシステム、つまりオペレーションやメニューといったコンクールの構造は大きく変化していると感じます。

swissinfo.ch:バレエ界に足を踏み入れるきっかけとなったスイス人バレエ教師・振付家のハンス・マイスターさんとの出会いはどのようなものだったのですか?

熊川:雪の降る2月に、北海道で参加した講習会で出会いました。素敵な先生でしたよ。ロイヤル・バレエ学校への入学を後押ししてもらい、ローザンヌ国際バレエ・コンクールにもロイヤル・バレエ学校の生徒として出場しました。世界への扉を用意してくれた方と言えますね。

swissinfo.ch:その講習会ではマイスターさんに自分から積極的にアプローチをして、ドン・キホーテのソロを見てもらった、と。

熊川:当時、北海道で暮らす少年には、なかなか世界とのつながりがありませんでした。子供ですし、北海道だとなおさらハードルが高かったんです。だから、外国人の先生の講習会を受ければ、海を渡るきっかけになるのではないかと思い、かなり気合を入れてアピールしたことは覚えていますね。元々目立ちたがりの性格だったんです。

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