2023-02-15 政治・国際

スペインのミンク農場で鳥インフルが感染爆発 新たな変異ウイルスは人に影響を及ぼすのか

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注目ポイント

スペインの毛皮農場で飼育されているミンクの間で、鳥インフルエンザが拡大している。米紙ニューヨーク・タイムズは、鳥インフルエンザウイルスの新亜種が哺乳類の間で広がる可能性があり、より積極的な監視の必要性が浮き彫りになったと伝えた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、昨年10月、スペイン北部ガリシア州カラルの毛皮農場のミンクが突然、集団で病気になった。エサを食べなくなり、過剰に唾液を分泌し始めた。動きがぎくしゃくしたり、震えが見られるようになり、鼻血も散見されたという。

当初、専門家は原因を新型コロナウイルスではないかと疑っていた。というのも、パンデミックが始まって以来、コロナウイルスはミンク農場でも繰り返し検出され、大量の殺処分を強いられ、農場は一時閉鎖となったからだ。

だが、今回は新型コロナウイルスではなく、鳥インフルエンザウイルスの高病原性株H5N1だった。高病原性とは、国際獣疫事務局(OIE)の定義で、最低8羽の4~8週齢の鶏に感染させ、10日以内に75%以上の致死率を示した場合を示す。ここ数年でH5N1の新たな亜種が世界中の野鳥やニワトリなどの間で広く拡散し、感染した鳥を捕食するキツネ、アライグマ、クマなどの哺乳類にも大きな影響を与えた。

ところが、ミンク農場での感染は新たに深刻な事態の兆候を見せた。スペインでの例は、ウイルスがミンクからミンクへと広がった。つまり、哺乳類間での感染が起こり得ることを示す異常な突然変異が起きていたのだ。

オランダ・エラスムス大学医療センターの獣医病理学者、タイス・クイケン博士は、鳥インフルエンザウイルスが哺乳類の間でも素早く広がるという「恐怖のシナリオ」が現実のものとなったと警戒感を示した。

それでも殺処分されたミンクがウイルスを人間に感染させたという実例はなく、専門家はミンクの感染爆発でパニックになる必要はないと強調する。ただし、ワシントン州立大学獣医学部のクリシィ・エクストランド博士は、「警戒と準備を怠らないでおくべきだ」とくぎを刺した。

スペインの農場で異変が現れたのは、昨年10月の第1週だった。ミンクの死が一気に急増した。当初、感染が見つかったのは5万匹のミンクを飼育していた農場の一角だけだったが、その後、数週間で感染爆発は農場全体に広がった。

「農場内での感染メカニズムはまだ分かっていないが、ウイルスが移動できたことは明らかだ」と欧州連合鳥インフルエンザ研究所のイザベル・モネ医師は指摘した。検査により、同農場のミンクがH5N1に感染していることが判明し、その後、全て殺処分された。

ミンクにどのようにウイルスが感染したかは正確には分かっていないが、スペインの農場を含む養殖ミンクは、多くの場合、生の鶏肉を与えられており、そのため鳥インフルに感染する潜在的なリスクがあるという。

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