2023-02-14 政治・国際

世界的な労働力不足 移民大国スイスも人材争奪戦に

注目ポイント

多くの経済先進国と同様、スイスも主要産業セクターでかつてなく深刻な人手不足に直面している。人口の高齢化とライフスタイルの変化は、今までの労働市場の様相を根本的に変えている。そしてこれは、まだほんの序の口に過ぎない。

この人口の増加傾向は続くのだろうか?労働市場は空前の人手不足で、外国人労働者の大量移入は実際の経済的ニーズに答えているように見える。しかし移民問題は、インフラ、住宅問題、社会的結束などにも関係するため政治問題として扱われ、23年の総選挙で主な争点となる可能性がある。

外国の人材を必要とするならば、国の経済市場が魅力的でなければならない。今までは、高賃金、そして快適な労働環境と生活環境のおかげで、スイスは確実に条件を満たしていた。しかし世界的な人手不足の今、国家間の競争は激しくなり、勢力図は書き換えられる可能性もある。各国はより能力と専門性の高い人材を求めている、とワナー氏は指摘する。「スイスが『エリート』専門家にとって、魅力的であり続けることが出来るかどうか、定かではない」

同氏は労働力を確保するために「人口統計学を利用したマーケティングが必要な時代に入った」と指摘する。例えば若年層のポルトガル移民は、有利な経済的条件や19年以来リスボンが施行する「帰還」推奨政策のおかげで、大量に帰国している。

将来のニーズに見合ったスキルの分析

世界経済が直面する課題には、量的なものだけでなく質的なものもある。ワナー氏は、人口ピラミッドの逆転は「労働市場の劇的な転換期」に発生したと指摘する。さらに、第3次産業の拡大と職業の専門化が進んだことで、特定の活動、特に第2次産業の一部が消滅し、テクノロジーなど特定の分野は急速に発展していると分析する。

また「これらの変化は、ロボット工学やAIの発展により、この先ますます勢いを増す」と予測するが、これらの新テクノロジーが人間にとって代わる可能性については懐疑的だ。「人間(の労働力)は現在、そしておそらく未来においても重要であり続ける。道路を建設するほどの能力を持つロボットはまだ発明されていない」(ワナー氏)

ワナー氏は、スイスは過去20年にわたり、国民が好まない単純労働のポストを埋めるのに、主に欧州の労働力に頼ってきた、と説明する。しかし各国の教育水準は向上しており、将来的には単純労働の担い手を、欧州以外の国まで探しに行かなければならなくなる。ところがスイスはEU圏外からの移民に対して厳しい基準を設けており、ハイレベルな資格を持たないと移住は不可能だ。そして「このことは将来的に問題となるかもしれない」と指摘する。今後、政界がこの難しい問題にどのように切り込んでいくのか、緩和方向に舵を切るのかが注目される。

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