注目ポイント
フィリピン沿岸警備隊は13日、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のセカンド・トーマス礁にある同国の海軍拠点への補給を行っていた巡視船に対し、中国海警局の船が「軍事級のレーザー」を照射して妨害行為をしたとして非難した。中国による周辺国に対する同様の威嚇行動は過去にも報告されていた。
中国海警局の船による妨害があったのは今月6日。ブリッジにいた乗組員がレーザー照射を受け、一時的に前が見えなくなるなど危険な状況を招いたという。フィリピン当局は、「フィリピン政府の艦船による軍兵士への食料・物資の補給を意図的に妨害したことは、西フィリピン海(南シナ海)におけるフィリピンの主権をあからさまに無視し、明確に侵害している」とし、中国に抗議をした。
この事件は、南沙諸島のセカンド・トーマス礁(フィリピン名・アユンギン礁、中国名・仁愛礁)の近くで発生した。
中国外務省は13日、フィリピン船が「中国側の許可なしに仁愛礁の水域に侵入した」との声明を発表。中国外務省の汪文斌報道官は、「中国の海上警察船は、中国の国内法と国際法に従い、中国の主権と海洋秩序を守った」と語った。中国側がどのような行動を取ったのかは明らかにしなかった。
中国は南シナ海のほぼ全てと、その中のほとんどの島々に対する、「議論の余地のない主権」を主張している。これには約100の小さな島とサンゴ礁からなる群島であるスプラトリー諸島も含まれ、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイもその全域または一部の領有権を主張している。台湾は同諸島北部に位置する太平島や中州島を実効支配している。
フィリピンはこの海域を西フィリピン海と呼び、1999年には同国海軍の輸送船BRPシエラマドレ号をセカンド・トーマス礁に意図的に座礁させ、現在も同海域の領有権を保持する拠点にしている。6日の事件では、フィリピン沿岸警備隊の巡視船BRPマラパスクア号がシエラマドレ号に補給する任務中で、中国の船に挑発されたとフィリピン当局は主張している。
フィリピン当局はまた、「中国船はBRPマラパスクア号に向かって緑色のレーザー光を2回照射し、ブリッジの乗組員の視野を一時的に奪った。中国船はまた、船の右舷から約140メートルまで接近する危険な操作を行った」と説明。
「BRPシエラマドレ号のフィリピンの乗員に食料や物資を届けるフィリピンの艦船を故意に妨害することは、西フィリピン海のこの海域におけるフィリピンの主権的権利をあからさまに無視し、明らかに侵害するもの」と非難した。
米CNNによると、今回のような中国船によるレーザーを使った妨害行為は以下の通り、過去にも報告されている。
【2022年2月】 オーストラリア軍のP‐8A哨戒機が同国北部ノーザンテリトリーとニューギニア島の間の水域であるアラフラ海上空を飛行中、中国海軍の軍艦が同機に「レーザー照射した」。中国側はオーストラリアの主張が「真実ではない」と主張。「公海における中国船の通常の航行は、関連する国際法と慣行に準拠しており、完全に合法」(中国外務省の汪報道官)とした。