注目ポイント
2014年にウクライナ上空で起きたマレーシア航空機撃墜事件の国際合同捜査チームは8日(日本時間9日)、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派勢力「ドネツク人民共和国」にミサイル提供を決定した可能性が高いとの捜査結果を発表した。
親ロシア派勢力が支配するウクライナ東部上空で2014年7月17日、アムステルダム発クアラルンプール行のマレーシア航空MH17便が撃墜され、乗客乗員全298人が全員死亡した事件。オランダなどの合同捜査チームは8日、最終報告書を発表し、プーチン大統領が親ロ派勢力に地対空ミサイルを提供する決定をした可能性が高いと結論付けた。
報告書は、ロシアが一方的に独立を宣言した「ドネツク共和国」とロシア情報機関の通話から、「プーチン氏が(供与を)認可したという具体的な証拠がある」とした。
合同捜査チームは、オランダ、オーストラリア、マレーシア、ベルギー、ウクライナ各国の専門家で構成された。報告書の中でオランダのディグナ・ヴァン・ベッツェラー検察官は、プーチン氏が親ロシア派「ドネツク共和国」側にロシア製のBukブーク防空ミサイルシステムの供給を決めたことが「強く示されている」と指摘。ただ、「完全かつ決定的な証拠は見つかっていない」として、訴追は困難との結論に達した。
MH17便に使用されたミサイルは、ロシア南西部クルスク市が拠点のロシア軍の第53対空ミサイル旅団から親ロシア派に供与されたBukブーク防空ミサイルシステムのものだということが分かっている。だが、ベッツェラー検察官は、ロシアの協力がなければ、「捜査は限界に達している。手がかりは全て調べ尽くした」と述べた。
事件が起きたのは、ウクライナ東部ドンバス地方で親ロシアの反政府勢力が支配下としていたい地域の上空だった。ボーイング777型機のMH17便が消息を絶って約1時間後、元ロシア連邦保安局(FSB)大佐で、「ドネツク共和国」の武装勢力を組織したイーゴリ・ギルキン被告はSNSで「ウクライナ軍の輸送機を撃墜した」と主張した。
だが、ドネツク州グラボベ付近に落ちた機体の残骸が民間機のものだったことが判明すると、ギルキン被告は慌てて主張を撤回し、関与を否定した。
捜査チームは19年6月、ミサイルを配備したとして殺人罪でロシア軍の元大佐ら4人を起訴すると発表。オランダの裁判所は昨年11月、4人のうちロシア人2人とウクライナ人1人に終身刑を言い渡し、ロシア人1人に無罪判決を下した。
有罪判決を受けたのは、ギルキン、元ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)幹部セルゲイ・ドゥビンスキー、ウクライナ人分離派指導者レオニド・ハルチェンコの3被告。スティーンホイス裁判長は「多くの犠牲者と残された多くの親族に多くの苦しみを与えた被告らの行為には、最も厳しい罰だけがふさわしい」とした。