2023-02-09 政治・国際

徴兵制度は本来、軍事奴隷制の一種であり、日本は 「本人の意に反する苦役」という憲法に違反する国家的行為とみなしている

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注目ポイント

「世界に奴隷制度が存在してはならない」ことは、多くの人が同意することだが、実 際には徴兵制度の本質は「合法的」な奴隷制度であり、多くの国で徴兵制度の合憲性 が模索され続けている。台湾では、兵役に関する主な意思決定者であるはずの国会が 、全ての決定を「プロフェッショナル」な国防部に押し付けている。この場合はどの ような問題が発生するのか?


この政府見解の最後には、今後、状況の変化により、上記の見解が変更されることはないと宣言した。以上のような徴兵制度の本質に関する検討は、私たちを啓発してくれるものと信じている。台湾の大法官は釋字第490号について、「男子の兵役義務は、人間の尊厳に反しないし、憲法上の価値体系の根幹を揺るがすものではない 」と、根拠なく恣意的に宣言したが、現実には、徴兵制度と人間の尊厳や基本的人権(「神聖な義務」という意識形態に隠された)との間の緊張した対立関係は、大法官が主張したように単純ではない。


市川平ひろみ氏が指摘するように、徴兵制度は個人と国家との直接対決である。近代国家における徴兵制度は、個人に対する物理的な拘束、生命に対する潜在的な脅威であるだけでなく、国家が徴兵制度をもとに、個人の内面である精神的思考に強制的に介入し、被徴兵者の世界観と価値観に干渉することによって、思想及び良心の自由を直接脅かすものでもある。


兵役に関する意思決定は国会が主体であるべきだが、実際はどうなのか?
以下、兵役に関する政策形成における国会の役割について、筆者が提言する。
大法官は釋字第490号について、「国民の兵役に関する重要事項は、国家の安全保障と社会の発展の必要性を考慮し、立法者の裁量で法律により決定されるべきである」と述べている。つまり、兵役に関する重要事項は、国会が決めるべきである。兵役に関する重要事項は、国民の基本的人権の制限に大きく関わることであるため、国会が法律を定めて決めるほど重大なものである。もともと、近代立憲主義の誕生以来、国会は基本権を保障する門番の役割も同時に担ってきた。しかし、実際はどうなのか?この1年以来の今回の兵役期間の延長に関する報道を観察すると、兵役期間を延長すべきかどうかの決定権は、実際は総統、行政院、国防部、国家安全会議という、権限的に国防に関わる行政機関に集中していることが分かる。さらに、兵役関連事項
に密接に携わっているはずの内政部でさえ、報道では存在感が薄いように見える。一方で立法院はどうなのか?兵役期間の延長に関する事項に関心を持とうと、国防部の官員に質問をする議員も多いが、兵役政策の形成に決定的な影響を与える重要な参加者というより、国会では単なる質問ができる傍観者のように振る舞っていた。国会が兵役政策の形成に決定権や参加権を持たずに、傍観者の役割に追いやられていることは、現行の「兵役法」の規定と切り離せない関係がある。兵役法第16条では、常備兵役を「現役」、「軍事訓練」、「後備役」の3種類に分類している。その中で「現役」は1年間の徴兵制度、「軍事訓練」は4か月の(比較的)短期間の徴兵制度を指す。
「現役」も「軍事訓練」も、もちろん「常備軍が必要とする兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるもの」という男性の一般的な徴兵制度であるが、兵役期間と被徴兵者が行う軍事任務の内容が異なるだけである。たとえ4か月であっても、人身自由を拘束する度合いが高いことは、人身自由の制限の度合いが高いことと変わりはない。
兵役法第34条は、現役と軍事訓練との間の変更手続きを定めている。第34条第4項では、「徴兵検査に合格した男子につき、前項規定に基づき常備兵現役の服役徴集を停止する時期および出生年は、国防部が内政部と共に兵員人数および兵源の状況を検討し、1年前に行政院に報告して許可を受け、かつ立法院に送って審査された後公告する。徴集を回復するときも、同じである」と規定している。立法院が確認すべき法律案を審査に通すと変更を主張する可能性はあるが、兵役法の規定を見る限り、軍事訓練から現役への切り替えを行うのであれば、つまり、4か月の徴兵制度から1年の徴兵制度への変更は、行政機関内部の決定が立法権に通知されればよく、立法権の同意は必要ないのである。
つまり、兵役法第34条によって、立法権は4か月の徴兵制度を1年の徴兵制度に変更するかどうかの決定権を、最初から行政権に譲り渡しているのである。

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