2023-02-09 政治・国際

徴兵制度は本来、軍事奴隷制の一種であり、日本は 「本人の意に反する苦役」という憲法に違反する国家的行為とみなしている

© Reuters/ 達志影像

注目ポイント

「世界に奴隷制度が存在してはならない」ことは、多くの人が同意することだが、実 際には徴兵制度の本質は「合法的」な奴隷制度であり、多くの国で徴兵制度の合憲性 が模索され続けている。台湾では、兵役に関する主な意思決定者であるはずの国会が 、全ての決定を「プロフェッショナル」な国防部に押し付けている。この場合はどの ような問題が発生するのか?


1980年の政府見解では、まず徴兵制度を「すべての国民に兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度」と定義し、「軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるもの」と理解された。上記の徴兵制度の定義のもと、政府の見解では「徴兵制度は平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条、第18条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではない」と考えた。
注目すべきは、政府の憲法解釈が、交戦権の保持と陸海空軍およびその他の戦力の保持を禁止した、憲法第9条を引用していないことである。もちろん、政府は自衛隊の違憲性に関する問題を回避するために、意図的に第9条を回避している。憲法第18条だけで、徴兵制度が違憲であると判断することも可能であることを示している。


日本国憲法第13条は個人の尊厳と幸福追求権に関する一般規定(人権保障の基本原則)であり、第18条は「全ての奴隷的拘束」と「(犯罪に因る処罰の場合を除いて)自己の意思に反する苦役」を禁止している。翌年、日本政府は「徴兵制度は第18条に違反している」ことについて、さらに説明を行った。
日本政府は、徴兵制度が「奴隷的拘束」に該当しないとはいえ、それでも「自己の意思に反する苦役」であると考えた。「徴兵制度は”自己の意思に反する苦役”として憲法上禁止されている」という政府の見解は長年変わっておらず、内閣総理大臣在任中に国家の軍事権限の拡大に力を入れていた安倍晋三総理でさえも、在任中にこの見解を繰り返した。


もちろん、1980年の政府見解に疑問がなかったわけではない。大江志乃夫氏が指摘したように、日本政府の徴兵制度に対する定義は、数ある徴兵制度のうちの一部分に過ぎない。大江氏、庄幹正都氏は、1980年の政府見解は恐らく、自衛隊員の強制採用制度の合憲性に、わざわざ余地を残しているのではないかと共に指摘している。
2015年、日本政府は再び国会で、徴兵制度の憲法解釈についての政府見解は変わっていないと述べた。特に、兵役が「兵役」と呼ばれるかどうか、その組織が「軍隊」という名義を使用しているかどうかにかかわらず、徴兵制度は憲法上禁止されていると強調した。さらに、日本政府は自衛隊を軍隊とは考えていないが、それでも2015年の見解では、「自衛隊に必要な人材を本人の意思に反して強制的に徴集する」ことは違憲であると強調した。

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