注目ポイント
台湾人女性と結婚し、長年台湾在住のライターとして活躍してきた広橋賢蔵氏が、このほど台湾での帰化が認められた。日本人が自らの意志で「TAIWAN」(中華民国)パスポートを取得したいま、脳裏には中台両岸の関係の複雑さや、日本で帰化した台湾系華人らが、再び「台湾」(中華民国)籍を求める心理の背景などが明滅。一方で菊花紋章のパスポートに加え、真新しい緑のパスポートを手にした高揚感もあるという。中国大陸の「台湾同胞証」も次なるターゲットに…
よって私は2年間、キッチリと海外に滞在した日数を計算して行動しないと「中華民国の規律を守らない不忠の輩」としてハネられてしまうので、私のパスポートには、きれいに「中華民国」出入境の印鑑が入り、パスポートに打刻されない自動入管も利用していない。
だが、本当は出境するたび、提出するパスポートを間違えないように常にビクビクしている。例えば、筆者は日本のパスポート番号で登録したアカウントで航空チケットを買うので、桃園空港のチケットカウンターでは日本パスポートでIDチェックをしてもらう。そして一旦日本パスポートをしまい、出境審査の時は「TAIWAN」パスポートで出るから、頭がこんがらがりそうになるのだ。
正式な台湾身分証をゲットしたら、私が日本パスポートで出入境してもおとがめはないのだろうが、今後も出境の際のパスポート2冊使いは習慣になってしまうのだろう。
「同胞証」は魅惑の中国大陸フリーパス
さて、私が「TAIWAN」パスポートと同様に、ゲットしたいと思っているのが「台湾同胞証」。中華人民共和国を出入りするため専用の証書だ。これはかなりレアな渡航証だ。通常に別の国に行くなら、ビザがあればいいじゃないか、ということなのだが、ここが台湾と中国の「特殊な」両岸関係の最たるものだと思う。
中華人民共和国は、台湾を「不可分の領土」だとしており、「中華民国」の存在を認めず、同じ国という建前から、台湾の人々を「台湾同胞」という名称で呼ぶ。台湾人が所持している「中華民国(TAIWAN)パスポート」も当然、その効力は認められない。(厳密にいえば台湾(中華民国)側だって中国大陸全土に及ぶ法規定を維持している)
この矛盾を解決するために作られたのが、台湾人が中国に出入境するときのみに効力を発揮する「台湾同胞証」というわけだ。日本人の身分ではこういった特殊IDカードはありえないし、この証明を持っていると、アパートも借りられるし、居住地登録をすれば中国での滞在も無期限になるなど、中国人民に近い扱いを受けられる。まさに同胞の証であり、台湾人が中国でビジネスを展開する際にも大切なルーツとなる。持っていると役に立つかもしれない、と思っていた。
「台湾同胞証」は、中国政府の台湾に対する飴とムチの要素もあるのだろうと思う。中国側が台湾人をビジネスしやすいように優遇して引き込み、中国の土地に馴染ませ、少しずつ同化させようという意図である。ひいては、中台両岸の間で有事があった際には、格好の人質になる、というメリットも、中国側の計算に入っているのだろう。