注目ポイント
台湾人女性と結婚し、長年台湾在住のライターとして活躍してきた広橋賢蔵氏が、このほど台湾での帰化が認められた。日本人が自らの意志で「TAIWAN」(中華民国)パスポートを取得したいま、脳裏には中台両岸の関係の複雑さや、日本で帰化した台湾系華人らが、再び「台湾」(中華民国)籍を求める心理の背景などが明滅。一方で菊花紋章のパスポートに加え、真新しい緑のパスポートを手にした高揚感もあるという。中国大陸の「台湾同胞証」も次なるターゲットに…
5年台湾に住めば、台湾パスポートのゲット可!
1987年に香港から中国を訪れた旅がワタシにとって初の海外旅行、すなわちパスポートというものを初めて取得する機会となった。菊のご紋章と「日本国」の文字入りの表紙をみて、自分が日本人であることを改めて実感したものだ。それから35年以上にもわたり赤い表紙のパスポートには世話になってきたが、今回、台湾で帰化し、新たにTAIWAN(中華民国)パスポートを手にし、自分の顔写真入りのページを確認した時は、また違った高揚感がわきあがってきた。

緑の表紙のこのパスポートは、2021年に改訂された。表紙の「TAIWAN」の文字が以前よりも大きく強調され、中身の絵柄は台湾各地の名勝地になっている。国家として「台湾」を称していなかったのが、「中華民国」を「中華人民共和国」とカン違いするイミグレーション担当者も多発していたのであろう、便宜上の変更でもあり、台湾アイデンティティの顕れともいえる大胆な決定だった。

台湾の外交部(外務省に相当)の窓口に「帰化國籍許可証明」を持参すると、手の切れるような「TAIWAN」パスポートが発行してもらえる。手続き後の1週間で、ピカピカのTAIWANパスポートを入手した。


しかし待てよ。筆者は今「仮免中」の身分である。この宙ぶらりん状態で、どうして日本のパスポートと、TIAWANパスポートを使い分けすべきなのか。
だが、それは初めての出境の際に合点がいくことになった。
前も説明したように、筆者の身分証は、帰化国籍許可が下りて最短1年で発行される。が、日本に戻る用事があるわけで、筆者は1年90日間以内の出境を2年間続けることになった。「TAIWAN」パスポートはワタシのような者のための出境記録「打刻カード」の役割を帯びて発給されたわけだ。
台湾にて出入境する時は「TAIWAN」パスポート、日本にて出入境する時は日本パスポート。
筆者は現在、こういう使い分けをしている。日本出入境時も日本のパスポートを使う必要はないのだが、日本に戻ってきたとき、イミグレーションで混み合う外国人の列に並びたくないからだ。日本パスポートの方なら、ほとんど並ぶこともなく通過できる。
滞在先のことは問わない台湾の入管
「出境先の出入境印がなかったら、台湾に戻ってきた時、審査官に不審に思われないか」と思われる方もいるだろう。が、審査官はワタシに「日本からお戻りですね」などとは聞かない。彼らは台湾での出入境をチェックするだけなのである。
が、「仮免中」の私が先の90日ルールをごまかすため、日本のパスポートを使って台湾で出入境したら、大変なことになる。ここら辺は、台湾のイミグレーションは目を光らせている。「台湾に帰化したのに、日本のパスポートを使って出入境記録を改ざんしようとしましたね、移民局に報告します」ということになり、私は「仮免」を剥奪される可能性もある。