注目ポイント
イタリアのマフィア対策庁が先月16日、同国南部シチリア島パレルモの診療所で、犯罪集団「コーサ・ノストラ」の超大物ボス、マッテオ・メッシーナ・デナロ被告(60)を逮捕してから約半月後の今月2日、今度は16年間逃走していた別のマフィアのボスを逮捕したことが分かった。
今回逮捕されたのは、イタリア南部カラブリア州を拠点とする犯罪組織「ヌドランゲタ」と関係のあるエドガルド・グレコ被告(63)。当局は、フランス南東部リヨン郊外のサンテティエンヌにある「カフェ・ロッシーニ・イタリアン・レストラン」で、〝パオロ・ディミトリオ〟という偽名を使い、ピザ職人として働いていたところを身柄確保した。
裁判記録によると、グレコ被告は1991年、ステファノ&ジュゼッペ・バルトロメオ兄弟を鉄製の棒で殴り殺し、遺体を酸で溶かすなど、2件の殺人と殺人未遂などで起訴され、終身刑の判決を受けた。だが、2006年に警察の簡易収容施設から逃走し、行方不明になっていた。その後、サンテティエンヌでピザレストランを開店していた。
グレコ被告は複数の刑務所職員を殺害した容疑でも起訴されており、捜査を主導したカラブリア州カタンツァーロのニコラ・グラッテリ主任検察官は、同被告を「危険な逃走犯」と位置付けていた。
逮捕の決め手となったのは、フランス地元紙ル・プログレが21年、地元にオープンしたグレコ被告のレストランを特集記事で取り上げ、同被告がその記事をフェイスブックに転載したことだった。その投稿を見つけたイタリアの検察当局が、フランスの捜査当局協力のもと、身柄確保に向けた捜査を開始していた。
記事の中でグレコ被告は、「店をオープンさせて夢をかなえた」「本場の味の手作りレシピを提供したい」などと語っていた。また、グレコ被告は偽名で定期的にソーシャルメディアを更新していたという。
イタリアのジャーナリストで作家のロベルト・サビアーノ氏は、マフィアの大物が「注目を集めたいと自己顕示欲を示すことはよくあること」と指摘した。〝エル・チャポ〟の通称で知られたメキシコの麻薬密売・密輸組織シナロア・カルテル最高幹部ホアキン・グスマン服役囚(65)を典型的な例として挙げ、かつて自伝映画を作りたいと考えた同服役囚は、米オスカー俳優ショーン・ペンと交渉することを望んでいたという。
サビアーノ氏は、06年の著書「死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国」(日本では08年に河出書房新社が出版)の中で、ナポリのマフィア組織「カモッラ」について言及したため、マフィアから命を狙われ、以来、警察の身辺保護を受けている。
イタリアのマフィア対策庁は、マフィアメンバー4人を特別重要手配犯として、同庁公式サイトにリストアップしている。それによると、パスクアーレ・ボナヴォタ被告(48)は18年から逃走中で、カラブリア州の「ヌドランゲタ」による犯罪に関与したとして有罪判決を受けた。シチリアのコーサ・ノストラのメンバー、ジョヴァンニ・モティシ被告(64)は、98年にシチリアでのマフィア絡みの殺人で有罪判決を受けた後、逃走した。
また、ナポリのマフィア「カモッラ」のレナート・チンクエグラネッラ被告(73)は、殺人、武器所持、恐喝などで有罪判決を受けた後、02年に逃走。アッティリオ・クベッドゥ被告(75)は複数の誘拐罪で有罪判決を受けたが、97年からイタリアで「最も危険な逃走犯」として指名手配されている。