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中国の偵察気球が米国本土上空に飛来した問題で、米国のバイデン大統領は4日(日本時間5日)、東海岸沖で米軍が撃墜したことを明らかにした。今月1日に米本土への飛来の報告を受けた後、人的被害の危険がなくなり次第、撃ち落とすよう国防総省に命じていたことが分かった。中国外務省は、「強烈な不満と抗議」を表明。「今回の件を利用して中国を攻撃、中傷することに断固反対する」と反発した。
米国防総省によると、米北方軍のF‐22戦闘機が空対空ミサイル「サイドワインダー」1発を発射し、4日午後(日本時間5日未明)に中国の偵察気球を南部サウスカロライナ州沖約11キロの米国の領海上で撃ち落とした。海軍と沿岸警備隊の複数の艦船が同日から現地で捜索に当たり、残骸の一部が海上に漂っていたという。
米軍は中国の情報収集活動を把握するための資料価値があるとみて捜索を継続、連邦捜査局(FBI)と連携して解析を急ぐ。
撃墜に先立ち、バイデン氏は記者団に「対処する」と話していた。また、ワシントンと北京の大使館ルートを通じてバイデン氏は、中国側に「米国がいかに事態を深刻に受け止めているかを伝えた」とした。
オースティン国防長官は声明で、「気球は米本土の戦略的拠点を監視する目的で中国が使っていた」と指摘。国防総省高官は「明らかに機密性の高い米軍施設の上空を飛んでいた」と記者団に述べ、「民間の気象研究用飛行船」だとする中国の主張を退けた。
それに対し、中国外務省は「過度な反応だ」と非難。「関連する(中国の)企業の正当な権利を断固として守る」と強調し、対抗措置を取る可能性も示した。
気球問題をめぐっては、ブリンケン国務長官が「明白な主権侵害と国際法違反だ」とし、今週にも予定していた中国訪問を延期。その意向を中国側に伝えた。中国の王毅共産党政治局員は中国が国際法を守っていると主張し、「理由のない臆測や宣伝は受け入れられない」と米側の批判に反発した
中国外務省は当初、気球について「事実関係を確認中」としていたが、米側の反発を受け、あくまで〝民生の気象研究用飛行船〟だと強調し、「不可抗力により米国に迷い込んだことを遺憾に思う」としていた。幕引きを図ったとみられるが、米中が関係再構築を模索する中、新たな火種となった。
また、3日に米国防総省は、別の中国の偵察気球が中南米上空を飛行していることも明らかにした。北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が監視を続けている。中国による「民生の気象研究用飛行船」との主張について、国防総省のライダー報道官は「偵察用だと分かっている」と退けた。ライダー氏によると、気球は操縦可能なもので、高度約1万8000メートルを飛行していた。ただ、気球が収集できる情報は限定的だとした。
ブルーメンソール米上院議員(民主)は、「偵察衛星についての中国側の言い訳はでまかせで、多くの点で、われわれの知性に対する侮辱だ。国務長官の訪問中止だけでなく、より強力な対応が必要。行動で怒りを示さなければならない」とツイートした。