2023-02-05 観光

苗栗大湖の歴史を伝える 樟脳の道「樟之細道」を再発見

注目ポイント

幼い頃の記憶では、祖母のコートからはいつもうっすらと樟脳のにおいが漂っていた。それは、普段は着ない「よそいき」の服で、ずっとしまわれていた衣類の証拠だった。この香りは、かつて台湾が樟脳王国であった時代につながる。 百年前の苗栗の大湖に、茶や樟脳などの物資を運ぶ「老官路」という山道があった。全国の優れた教師に与えられる師鐸賞に輝いたこともある彭宏源は、この「老官路」を探し当て、その再現に貢献した人物だ。今は古道の草を刈って整備したり、ガイドを務めるなどして、その歴史を伝えることに情熱を注ぐ。

客家には「人が勤勉なら宝を生むが、人が怠惰なら草が生える」ということわざがある。老官路が修復された後も、「あの道を歩こうという人などいないでしょう」と言われたことがあり、彭宏源は心配している。歩く人が少なければ、古道は再び大自然に覆われ、姿を消してしまうかもしれない。それで彼はガイドをするかたわら、ボランティアで除草や道の補修も行い、愛する故郷に誠心誠意で客を迎えている。

客家の三合院の民家。
二度と自然に回帰せぬよう

「私にできることには限りがありますが、何もやらないよりはましでしょう」と彭宏源は言う。文化や歴史の調査も年月との競争だ。地元の人へのインタビューを数多くやってきたが、お年寄り訪問のペースを速めなければならないと感じている。生まれ育った土地への愛をエネルギーに、「一人チーム」であちこちを回り、老官路のいにしえの姿を浮き彫りにする。

踏む者のない道は自然に帰すること、また歴史は昔を懐かしむだけのものではないことを、森林科学専門の彼は熟知する。古道が再現された今、訪問客や故郷に戻る若者によってこの客家の村に再び繁栄が訪れることを彼は願ってやまない。

山林を出て開けた土地に出ると、遠い山と谷の集落が見渡せる。


 転載元:台湾光華雑誌




 



 

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