2023-02-05 観光

苗栗大湖の歴史を伝える 樟脳の道「樟之細道」を再発見

注目ポイント

幼い頃の記憶では、祖母のコートからはいつもうっすらと樟脳のにおいが漂っていた。それは、普段は着ない「よそいき」の服で、ずっとしまわれていた衣類の証拠だった。この香りは、かつて台湾が樟脳王国であった時代につながる。 百年前の苗栗の大湖に、茶や樟脳などの物資を運ぶ「老官路」という山道があった。全国の優れた教師に与えられる師鐸賞に輝いたこともある彭宏源は、この「老官路」を探し当て、その再現に貢献した人物だ。今は古道の草を刈って整備したり、ガイドを務めるなどして、その歴史を伝えることに情熱を注ぐ。

客家委員会は「樟之細路」内の7区間の古道をそれぞれの客家の村に残る茶や樟脳関連の歴史的スポットと組み合わせ、合計6本の観光ルートとして打ち出した。つまり、桃園の小粗坑古道、新竹の渡南と飛鳳、石峎古道、苗栗の鳴鳳、老官路(老官道)、出関古道の6ルートで、難易度によって「親子向き」「挑戦」「健脚」の3段階にレベル分けされている。

渡南古道を歩けば、日本統治時代に植樹された大葉種アッサム茶の木が見られるし、台紅茶業文化館(関西台湾紅茶公司)や、伝統の三合院造りで建てられた「羅屋書院」に寄ってもいい。ほかにも石峎古道には、テレビドラマ『茶金』のロケが行われた洋館「姜阿新洋楼」がある。古道から客家の村に足を延ばせば、粄條(米粉の平打ち麺)や水晶餃子など、客家のB級グルメや創作料理も楽しめる。

伯公祠について説明する彭宏源。

森や木が主役の老官路

大湖の老官路は、省道「台3線」133.6~141.1キロ区間の東側を並行して走る稜線沿いの道で、かつてはやはり樟脳や茶、生活物資などを運ぶ山道だった。全長9.2キロほどあり、上述の観光ルート6本のうち最も長い。稜線から東側を眺めれば、「台湾小百岳」(都市近郊のお薦め100岳)の一つであり、タイヤル族の聖山でもある馬拉邦山や、大克山などが並び、西側には標高889メートルの関刀山もそびえるなど、さまざまな山の姿が楽しめる古道だ。都会の喧騒を離れ、森林や竹林、果樹園の静けさの中、歩みを進めることができる。歩き疲れた場合は、途中いつでも道を折れれば、すぐ台3線に出られる。

国立苗栗高級農工職業学校森林科で学科主任を務めていた彭宏源は、2009年に全国POWER教師賞を受賞、2010年には教育部(教育省)から師鐸賞を授与された。そんなおり、自分の村の伯公(土地神)廟の調査に加わったのをきっかけに、大湖全域の調査に関わるようになり、関係書籍も共著で出版した。おりしも定年退職後に、客家委員会による「樟之細路」プロジェクトが始まり、彼は当然のごとく、その考証作業に加わることにした。

「樟之細道」の沿線では本格的な客家料理が味わえる。写真は客家の擂茶の材料。(KC Global Media AXN Asia提供)
大湖の豊かな歴史を

「老官路は幼い頃によく歩いたものですが、それから数十年たち、道の場所もわからなくなっていました」彭宏源は、2名の同伴者とともにまず最初に行なった道探しについて語ってくれた。「3人それぞれ鎌を手に、南湖の入り口から目の前の草木を刈りながら半日かけて分け入りましたが、それでも見つかりませんでした」古道の発見が極めて困難な挑戦であることは明らかだった。その後、水土保持局の測量スタッフが17日間もかけてやっと古道の位置を突き止めた。最後の手作業によるトレイル補修作業にも、彭宏源は再び加わっている。

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