注目ポイント
2022年7月、Volkswagenのグループ会社とSTMicroelectronicsは、車載半導体チップ(SoC)を共同開発すると発表した。SoCのウエハー製造はTSMCに委託する予定。これはまれにみる事例といえる。 これから数年の間にウエハー工場の建設は84か所も予定されているが、研究機関の最新報告によると車載半導体不足の状況は再来するという。その理由は電気自動車の増加に対してチップの製造が追いつかないだけではなく、電子機器もチップが必要であること。半導体不足の問題を解決するため、これから自動車産業は方向転換を図り、半導体サプライヤーと直接的な関係を築き、新たな半導体サプライチェーンを構築する。
車載半導体不足は再来する
2021年に襲来した半導体不足の問題は、まだ解決していない様子。ポルシェ コンサルティング(Porsche Consulting)の最新予測によると、28ナノ以上のプロセスの半導体不足は、構造的な問題で2025年以前には解決されないという。ヨーロッパの自動車メーカーは引き続き半導体の供給不足に悩まされる。こうした予測内容は自動車業界全体の注目を集めている。
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の予測によると、半導体は重要な戦略物資のため、各国政府は製造量の増加や工場の建設に力を注ぎ、奨励政策を打ち出す。2021〜2023年の3年間には、84もの工場が建設され、投資金額は5000億ドルを超える。
米国を主とするアメリカ大陸では2021〜2023年に18の工場を建設する予定。アジアの場合、中国では成熟プロセスの工場20か所、台湾では14か所、日本と東南アジアでは6か所ずつ、韓国では3か所。ヨーロッパと中近東では過去最多の17の工場を建設する。
しかし、類を見ない建設ラッシュでもニーズに追いつかないようだ。ポルシェ コンサルティングの報告では、現在製造しているのは主に90nmプロセスの半導体で電気自動車向けの半導体ではないと強調した。電気自動車の市場規模が急速に拡大したため、製造量が追いつかない。
また、コンサルティング企業、アリックスパートナーズ (AlixPartners)が、昨年6月に発表した自動車業界分析報告によると、2022年にヨーロッパは電気自動車の生産が急速に増加していた。EUのバッテリー式電気自動車(BEV)のシェア率は2035年に83%にまでのぼると見込まれる。これは世界水準の50%より大きく上回る。
しかし、バッテリー式電気自動車に必要なチップ量は、従来の自動車の10倍。半導体メーカーは既存のパソコン、携帯、スマート電気製品などの電子機器メーカーに納品するだけではなく、急成長している電気自動車メーカーのニーズにも応じなければならない。
自動車メーカーが方向転換、車載半導体専用の工場を建設
供給不足以外にも、半導体メーカーは家庭用電化製品用の半導体を製造したがることも車載半導体不足の原因の一つ。車載半導体は成熟製造プロセスがメインで、粗利益が比較的低い。さらに台湾の半導体製造会社、パワーテック・テクノロジー社の関係者によると、車載半導体の開発や実証実験等の製品ライフサイクルもパソコンや携帯などの電子機器と大きく異なる。