注目ポイント
先月末、米軍空軍大将が内部メモで、2025年までに中国が台湾に侵攻し、米中戦争が起こりうると警告したことが報じられました。歴史の中で何度も繰り返されてきた覇権国家と新興国家による競り合いが行き着く場所はどこなのかーー山本一郎さんの月イチ連載です。
何よりも問題なのは、平和を叫びそれを実現するために米中双方の冷静な対応を求め、偶発的な事態が全面戦争に陥らないように抑止を働きかけることも大事ですが、それもちゃんとやりつつ、着地点をどこにするのかという落としどころに関する議論がなかなかに成立を見ないことです。中国側の勝利条件も、アメリカ側の勝利条件も並び立たないのが明らかなとき、可能性はそう高くないはずの軍事的衝突・台湾を巡る紛争というものが本当に勃発してしまい収拾がつかなくなること自体が、この地域に生きる台日両国のリスクとなります。
台湾有事、25年までにも 米軍幹部が内部メモで警告|時事通信
そんな中、あくまで個人的な見解を記した内部メモとして、アメリカ空軍大将のミニハンさんが記していたことが報じられ、幾つかあるシナリオのなかでももっとも面倒くさい状況になりうるものを示した話がありました。そりゃあ可能性の問題として、高級軍人がさまざまな敬意を検討するのもまた当然と言えます。
他方で、中東での戦争や今回のウクライナ紛争においても相応に危機と予測されてきたものがなんだかんだ本当に戦争に発展してしまったり、取り返しのつかない事態となることは繰り返されてきました。その中でも今回の米中対立はアメリカにとってソビエト連邦との冷戦時代に続いての覇権争いの国家間競争を意味します。台湾においても、人口減少で経済力を支える高度な研究開発をどうしていくのか悩ましく、日本も同様である限り、このあたりの台日協力をどのような形で実現していくのか真価が問われておるように思います。
末尾ながら、万が一の有事がある場合のシミュレーションも進んでいます。この中で、実のところアメリカ建国以来、アメリカ兵に千人単位の犠牲者が出る恐れがあります。台湾軍もシナリオによっては中国の攻勢の前に壊滅して一万人以上の犠牲者、日本人にも二千人あまりと多くの艦艇が失われると見られます。台湾紛争を考えるとき、万が一、偶発的な局地戦で終わらなかった場合の落としどころは、割と早い段階で考えておかないと本当の意味で台湾の存亡に関わるものですから、想定するだけで冷や汗が出るなあと。
譲れないものがある、でも戦争はしたくない、人間は古代ギリシャの時代から同じようなぐをくりかえしてきたのでしょう。