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世界中で宝くじの賞金が高額化の一途をたどる中、巨額の当選金を手にした者は「人生が一変して、もれなく不幸になる」とやっかみ交じりに揶揄(やゆ)されるが、実際はどうなのか。英国で2011年、当時欧州で最高額の当選金1億6100万ポンド(約259億円)を当てた男性が19年に71歳で亡くなるまでの8年間、いかに当選金を使ったかが先週報じられた。高額当選者の具体的な支出が明らかになるのは異例だ。
欧米メディアによると、スコットランド・ノース・エアシャー在住だったテレビ局カメラマンのコリン・ウィアさんは、購入した宝くじ「ユーロミリオンズ」が大当たりし、欧州で最高額となる1億6100万ポンドもの大金を手にした。
1日にして大富豪となったウィアさんは、その一部を家族や友人たちに分け与え、慈善団体に寄付し、自身で基金を設立。株式や不動産投資も行った。タックス・ヘイヴン(租税回避地)として知られるアイリッシュ海のマン島で、約350万ポンド(約5億6250万円)相当の資産を持ち、マイクロソフトやLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、エスティローダーなどの株式約1230万ポンド(約19億8000万円)以上を保有していた。
当時、ウィアさんは「大切な人たちから離れ、世界から遮断して小さな島でひっそり暮らすようなことはしたくなかった」と話していた。その言葉通り、宝くじが大当たりしたその年には500万ポンド(約8億円)を支出し、友人たちのために家を購入したり、才能ある若者のための奨学金基金を創設、地元サッカークラブや高齢者施設、スポーツセンターなどにも寄付した。
19年12月に急性腎不全による敗血症で亡くなる前には、長年応援してきたスコットランド・グラスゴーを本拠地にする地元サッカークラブ、パーティック・シッスルFCを支援するため、同チームの持株会社の株55%を取得し、筆頭株主にもなった。
また、地元政党「スコットランド国民党」を支持してきたウィアさんは14年、英国からスコットランドの独立を問う住民投票実現に向けた活動を展開する同党のため、数百万ポンドを寄付。一夜にして大富豪になったにもかかわらず、その富に溺れることなく、晩年を有意義に過ごしたと英紙デイリー・メールは伝えた。
ただ、ユーロミリオンズの巨額の当選金は、ウィアさんの健康や、永遠の幸福を得るには十分ではなかったと同紙は指摘する。ウィアさんは長年にわたり健康不安に苦しみ、亡くなる直前の19年夏には38年間連れ添った妻クリスティーンさんと離婚。最後は110万ポンド(約1億8000万円)で前年に購入していた海辺の豪邸で息を引き取った。
一方、クリスティーンさんにはスコットランド・トルーンに350万ポンド(約5億6250万円)で共同購入した大豪邸を譲り、離婚の際には資産を2分していた。ウィアさんが亡くなった時、保有していた資産は約21万2000ポンド(約3400万円)相当の家具や宝石、美術品と車4台。所有車はビンテージもののベントレー・アルナージとジャガー F-PACEのSUV、メルセデス・ベンツE-Classワゴン、同V‐Classミニバンで、中古市場価格で、総額3万5000ポンド(約563万円)ほどだったという。