2023-01-30 政治・国際

大使ではない台湾の「駐米大使」蕭美琴氏 中国の戦狼外交に対し〝戦猫外交〟を駆使

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注目ポイント

米紙ニューヨーク・タイムズは今月22日、事実上の駐米台湾大使である蕭美琴(しょう・びきん)代表を特集し、ロングインタビュー記事を掲載した。「ワシントンで最大級の影響力を持つ大使は大使ではない」という見出しで、「自身を外交のデリケートな綱を渡る〝戦猫〟と呼び、中国は彼女について戦争を引き起こしかねないトラブルメーカーと呼ぶ」と紹介した。

蕭美琴氏(51)は、2020年6月にワシントンにある駐米台北経済文化代表処「ツイン・オークス」の初の女性駐米代表に就任した。以来、毎日のようにバイデン政権の高官と会話し、民主・共和両党の議会指導者たちと太いパイプを持つ。

トランプ政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は、「台湾はどの国よりワシントンで最も効果的な外交代表を擁している」とし、蕭氏の積極的な外交努力を評価した。

だが、米国は公式に台湾を独立国として認めていないため、蕭氏は「大使」の肩書では活動していない。あくまで台湾の経済と文化の代表で、大使館の代わりに台北経済文化代表処(TECRO)をワシントンに置いているのだ。

この回りくどい表現は、米中国交正常化の結果だ。1979年、北京政府を正当な政府とする「一つの中国」という政策的主張に合意した米国が、台湾を主権国家として正式に認めないことを約束したためだ。中国は台湾を違法な離脱州と見なしている。

そんな台湾の事実上の大使として活動する蕭氏を、中国政府は「危険な扇動者」とみなしている。昨年8月にナンシー・ペロシ米下院議長が台北を訪問した際、中国は蕭氏がこの訪問を巧妙に仕組んだとし、それが中国の軍事演習を促し、米中の緊張を危険な新たな極限に追いやったと非難した。

蕭氏は、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、難しい立ち位置であることを認めた上で、近年の中国外務省高官による過激で好戦的な外交スタイルが「戦狼外交」と呼ばれていることにちなみ、自身のスタイルを〝戦猫外交〟と呼ぶ。「猫は綱渡りができる。非常に機敏で柔軟な方法でバランスを取ることができるのです」と語った。

アメリカ人の母親と台湾基督長老教会の牧師であった台湾人の父親の間に日本の神戸で誕生した蕭氏は、幼少時代を台湾で過ごし、10代でニュージャージー州モントクレアに移った。その後、オーバリン大学を卒業し、コロンビア大学で政治学の修士号を取得した。

同紙によると、最も大きな影響を受けたのは、台湾独立派の民主進歩党代表で、かつて広報担当を務めたこともある蔡英文総統だ。さらに、ボルトン氏と、バイデン政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めるカート・キャンベル氏とは数十年来の友人でもある。

中国との関係上、米国当局は長年にわたり、蕭氏の前任者らがホワイトハウスと国務省を訪れることを禁止してきた。だが、そのような規制は時間の経過とともに緩和され、蕭氏は現在、「控えめに言っても、定期的に(ホワイトハウスの中でも米国政府の中枢)ウエストウィングと(米国務省がある)フォギーボトムを訪れている」と同紙は指摘する。

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