注目ポイント
欧州ではウクライナでの戦火がやまず、東アジアも台湾海峡の暗雲を包含したまま迎えた2023年。気鋭の論客として知られる国際政治学者、村田晃嗣・同志社大教授は、台湾の総統選をはじめ、ロシア、ウクライナの大統領選、米大統領選などを控えた2024年にこそ、真の国際政治の激動がやってくると指摘する。それゆえこの1年、日本は着実な外交・安全保障政策で歩を進めねば危ういが、それは内政の安定が維持できるかどうかにかかっている。
今年から2年間、日本は国連安保理の非常任理事国を務める。また、5月にはG7サミットを広島で主催する。日本外交の努力と創造力が問われる。さらに、昨年末に日本政府はいわゆる安保三文書を策定した。5年で43兆円を防衛費に充て、反撃能力も保持しようとしている。ロシアのウクライナ侵攻がなければ、日本がここまで防衛政策を大きく転換することはなかったであろう。もしロシアがウクライナで成功すれば、それは台湾をめぐる中国の野心に火をつけよう。中国の軍事的膨張、ロシアの暴走、北朝鮮の挑発と、日本は「戦後最大級の難局」(折木良一・元自衛隊統合幕僚長)に直面している。しかし、いかに立派な戦略文書を策定しても、予算の裏付けがなければ絵に描いた餅にすぎない。また、予算だけ膨張しても、関係諸機関が責任ある利害当事者としての自覚をもたなければ、オール日本で対応できない。さらに、日米同盟を基軸に、オーストラリアや韓国など関係諸国との多角的で重層的な安保協力が必要である。
国内政治の安定が不可欠
これらの課題を着実にこなすには、国内政治の安定が不可欠である。岸田文雄内閣は150日にわたる通常国会を乗り切り、統一地方選挙と衆議院の補欠選挙にも備えなければならない。その間に、スキャンダルを避け、コロナの混乱と景気の低迷にも対処しなければならない。
しかも、国際政治上の激動は2024年にやって来る。1月の台湾総統選挙に始まり、3月のロシア大統領選挙、春のウクライナ大統領選挙、そして11月にはアメリカの大統領選挙と、重要な選挙が続くからである。この間、9月には自由民主党の総裁選挙も予定されている。激動の24年に備えて、23年の日本は着実に外交・安全保障政策を進めていかなければならないのである。

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