注目ポイント
米国は、習近平政権による「台湾統一」が2027年に起きる可能性が最も高いと警戒。台湾は「空と海の戦力強化計画」を27年までに実施し、米国などと共に習近平国家主席の野望を阻止したい考えだ。そんな台湾をめぐる米中の思惑をフランスのニュースサイト「ワールドクランチ」が解説する。
そんな中、ウクライナでは弾薬が大量に消費され、NATO(北大西洋条約機構)の備蓄がほとんど底をつき、必要な軍事物資が輸送できない事態が続発した。
その経験を活かし、米議会は昨年12月、23年度の国防権限法に、台湾の防衛能力を向上させるため、今後5年間で最大100億ドル(約1兆2900億円)の支援を行うことが盛り込まれた。これには「地域有事備蓄」も含まれ、武器弾薬を台湾周辺に保管することで、有事の際、即時対応することができ、輸送時間を大幅に削減できるようになるという。
米国は過去の〝あいまい戦略〟を変更し、明確化に向けて動く理由は多くあるとした上で、同サイトは、決定的となったのが、中国の最高指導者である共産党総書記は「2期10年」という〝暗黙のルール〟を破り、習氏が3期目の続投を決め、事実上の独裁体制を固めたことだと指摘する。
異例の長期政権を正当化する習氏の主張は、台湾統一という大義名分だと同サイトは指摘。そのため、もし今後、国内で習政権をおびやかすような事態が起きた場合、不満分子の矛先を外に向けさせるため、習氏が軍事行動を起こす可能性が高く、米国と台湾にとって懸念材料になっているとワールドクランチは解説した。
米国は、中国が台湾を攻撃する可能性が最も高い時期は27年だと予測している。それは習氏が4期目を迎える年であり、中国人民解放軍の結成100周年でもあり、軍の近代化の一環として、重要な兵器が配備されることが予想されるからだ。
同サイトは、米軍が現在、中国の脅威に十分迅速に対処するために必要な配備を整えていないため、今年は双方の軍事力の差が縮まり、中国にとって最高の機会になる可能性もあるとしている。
いずれにせよ、米国と中国は時間との戦いに直面していると同サイトは言う。
中国は27年までに台湾への攻撃準備を整え、主要な武器を配備するだけでなく、台湾海峡での作戦準備や、経験を積んだ兵員を配置することも必要となる。経済面では、米国の大規模な制裁に直面してもある程度の安定を維持し、中国を支援する友好国を見つけることも重要となる。
一方の米国は、もし中国が攻撃した際には手痛い代償を払わせるため、台湾島全体を要塞化する〝ハリネズミ戦略〟を加速させようとしている。また、西太平洋での戦闘準備を強化し、〝アジア版NATO〟創設に向け、近隣諸国へのアプローチを始めている。
台風の目の中にいる台湾は、防衛力向上のため、自前による初の潜水艦の建造を進め、23年の第3四半期には進水させるという情報もある。また、台湾の立法院は昨年、23年に運用を開始する新たな防空システムを含む、5年間で2400億ドル(約31兆円)を上限とする「空と海の戦力強化計画」のための特別調達法を可決した。
もちろんその5年計画は偶然ではない。27年に中国が準備を完了させる前に、台湾は十分な対抗措置を取る必要があるからだ。