2023-01-24 政治・国際

ドイツ、ウクライナ支援で戦車供与見送りの訳 同盟国保有のレオパルト提供は「阻止しない」

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注目ポイント

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナにとって〝ゲームチェンジャー〟に成り得る重戦車の支援をめぐり、英国が早々に主力戦車「チャレンジャー2」の供与を表明したのとは対照的に、ドイツは主力戦車「レオパルト2」の供与に慎重な姿勢を崩していない。ただし、ベアボック独外相は22日、同戦車を保有するポーランドなどがウクライナに提供することについては阻止しないと述べた。

ロシアの侵攻を受けるウクライナの防衛を協議する関係国会合が20日、ドイツ西部のラムシュタイン米空軍基地で開かれた。ドイツのピストリウス国防相は同日、記者団に対し、ドイツ製主力戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与承認について「議論したが、まだ結論に至っていない」と述べた。製造国のドイツが供与を承認するかどうかが注目されていたが、「防空強化が最優先だ」と訴えた。

オースティン米国防長官が主催した20日の会合でピストリウス氏は、「ドイツが(供与を)妨害しているという印象は間違っている。メリットとデメリットを慎重に検討する必要がある」と主張した。その上で、ドイツはウクライナに対し10億ユーロ(約1400億円)規模の追加軍事支援を約束。既に供与を表明していた地対空ミサイルシステム「パトリオット」や防空システム「IRIS―T」が含まれ、ミサイル攻撃から守るための防空システム支援に力点を置いたとしている。

だが、レオパルト2については、「防空強化が最優先だ」として戦車供与は見送った。この決定を受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、「戦車以外の選択肢がないことは日々明らかになっている」と必要性を強調した。

欧州のシンクタンク「欧州外交評議会」によると、ポーランドやフィンランドを含む欧州13か国は、近代化改修したレオパルト2を保有。合計約2000両がNATO加盟国で導入されているという。

米CNNによると、保有国の多くはウクライナへの再輸出に同意したものの、ドイツの承認が必要な状況だった。そんな中、ドイツのベアボック外相は22日、フランスのテレビ局LCIに対し、「この問題に関して質問されたことはなかった。もし問われれば、われわれとしては阻止するつもりはない」と述べた。これはショルツ独首相が同日、米国を含めた北大西洋条約機構(NATO)の同盟国と合意が必要だとする発言を、より前進させたものだ。

レオパルト2は120ミリ滑空砲や7.62ミリ機関銃を搭載し、オフロードでも時速70キロで走行できる高い機動性が特徴。製造元であるドイツのクラウス・マッファイ・ベクマンによると、即席爆発装置(IED)や地雷、対戦車砲などの脅威に対する全周防御機能も持つ。

同戦車の重要性についてCNNは、「多数の車両が既にウクライナの近くに配備されていること、他のモデルに比べ整備の必要性が少ないことから、専門家はレオパルト2が供与されればすぐさまウクライナの追い風になる可能性があると見ている」と説明した。

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