2023-01-23 政治・国際

中国で行動制限なしの春節連休始まる 延べ21億人が大移動、海外旅行も再開

© Photo Credit: GettyImages 上海浦東国際空港

注目ポイント

中国で先週末、春節(旧正月)に合わせた1週間の大型連休が始まった。新型コロナウイルス対策の行動制限がなくなったため、連休前後も含めて前年比で倍増となる延べ約21億人が、帰省などで国内を移動することが見込まれている。延べ30億人が移動したとされるコロナ禍前の2019年よりは下回るものの、昨年からは大きく回復することになる。

中国は21日、春節(旧正月)の大型連休に入った。新型コロナウイルスを徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策終了後、初めて。行動制限のない春節連休は4年ぶりだ。帰省などで国内を移動する旅客数は昨年から倍増する見通し。

中国政府はまた、約3年間停止していた海外への団体旅行を2月6日に一部解禁すると発表した。行き先に日本と韓国などは含まれておらず、タイ、インドネシア、ロシアなど20か国に向かう旅行を解禁する。中国は新型コロナ流行初期の2020年1月、海外への団体旅行を停止。今月8日にコロナ対策を抜本的に緩和し、海外旅行を再開させる方針を示していた。

春節の連休は27日までで、習近平指導部は都市部から帰省先の地方へ感染が拡大することを警戒。特に医療体制が弱い農村で万全なウイルス対策を指示している。

日本政府は、爆発的に感染が拡大した中国からの入国者について水際対策を強化。中国も日本への団体旅行を解禁しておらず、日中関係は水際対策を巡って摩擦が激化。中国からのインバウンド(訪日客)の本格的回復には程遠い。各国は中国からの入国者への検査を強化するなどして、感染が波及しないよう警戒している。

中国当局は昨年12月に新型コロナ対策の抜本緩和を発表。中国への入国者の集中隔離を撤廃するとともに、「中国人の海外旅行を秩序よく再開させる」方針を示していた。

同時に、脱「コロナゼロ」政策で、北京や上海など都市部を中心に感染が爆発的に拡大。中国疾病予防コントロールセンターの専門家、呉尊友(ご・そんゆう)氏は21日、中国の人口の80%にあたる11億人が既に感染したとする分析結果を「微博(ウェイボ)」に投稿した。

呉氏は、既に大部分の人が感染したため、今後2~3か月の間に大規模な感染再拡大などが起きる可能性は「小さい」という見方を示した。

いまだに中国政府が詳細な情報公開をしていないため、実態は不明なままだ。国際社会の批判を受け、当局は一部データを公表したが十分とは言えず、さらなる情報公開が求められている。それでも、春節の大型連休で感染がさらに拡大しても、最新状況を中国が公表するかどうかも明らかではない。

そんな中、赤いちょうちんなどが飾られてお祝いムードの上海浦東国際空港では、タイの首都バンコクに一家4人で向かう会社経営、胡桂生さん(36)は、日本に好感を持っていたが「今回の水際対策で中国は排除されたと感じた」と旅先を選んだ理由を説明した。「日本は好きだが、水際対策が厳しいのでタイを選んだ」との声が聞かれた。

一方、北京の世界遺産「万里の長城」の観光スポット「八達嶺」で旧暦の大みそかに当たる21日、ライトアップが始まった。感染拡大前は春節に多くの人が万里の長城で幸運を祈ってきた。緑や白のライトに照らされた長城は、曲がりくねった様子が竜のように見え、観光客を楽しませた。

長城の春節に「年越しの風情」が戻り、山東省から休暇で来た自営業、孫兆明さん(53)は「ゼロコロナの時には観光は考えられなかった」と笑顔で話した。

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