注目ポイント
The News Lens JAPAN編集長・吉村剛史が台湾海峡や国際政治、その他最近の気になる話題について語る不定期連載コラム第2回。
新年快樂(新年おめでとうございます)恭喜發財(財運隆盛)身體健康(ご健康)萬事如意(ご多幸を祈念いたします)
アジア圏で盛大に祝われる春節(太陰暦正月)だが、今年の初一(元日)は、太陽暦においては例年よりも少し早目の1月22日。台湾では20日から10連休というからうらやましいかぎりだ。
事実、新型コロナ水際措置の緩和や円安も手伝って、この春節の「年末年始」時期は、3年ぶりの日本旅行を計画した台湾の友人らが大挙して来日しており、先日関西出身の友人と都内某所で少しぜいたくに「てっちり」(ふぐ鍋)を囲んでいたら、同じフロアの我々以外の個室客全員が台湾華語で会話しているのに気づいて愕然としたくらいだ。
個人の豊かさを示す1人当たり名目国内総生産(GDP)において台湾は2022年、日本を抜いて初の東アジア1位に。逆に日本は23年には韓国をも下回る見通しが立てられているという。きっとわが友人らの旅先での思い切ったリベンジ消費によってこの時期潤っている日本の飲食店も少なくないだろう。
その返礼というわけでもないが、1月11日から16日まで、所要あって台北を訪れ、仕事の合間に春節準備の買い物客でごったがえす大稻埕(迪化街)の年貨大街をのぞいたり、懐かしい現地記者仲間との尾牙(ウェイヤー=忘年会)に参加したりした。

筆者古巣の産経新聞においては社費台湾大学留学生、台北特派員の立場で計4回、台湾で春節を過ごしたが、久しぶりにこの時期の台湾を訪れて思い出したのは、明治以降、アジアでは珍しく太陽暦で正月を祝うようになった日本人駐在員の肝臓への負担の重さだ。
12月上旬から日本人駐在員同士の忘年会が始まり、1月の新年会シーズンは台湾社会の尾牙とのダブルパンチ。そして春節あけの春酒(新年会)までつきあうと、12月半ばから2月下旬ごろまでは、さながら「鉄の肝臓」養成期間なのであった。
ただし今回は酒宴の連続から逃れるいい口実に恵まれた。縁あって台湾南部の屏東県竹田鄉に存在する“アジア最南端の日本語図書館”「池上一郎博士文庫」の開館22周年記念行事に招待されたのだ。
池上一郎氏(1911~2001)は東京出身で東京帝大卒の医師。戦時中、軍医として竹田に赴任し、野戦病院院長を務めるかたわら、地元住民に対しても手厚い医療を施したことなどからこの地で敬愛され、戦後日本に引き揚げた後も台湾人留学生らの支援に尽力し、第二の故郷・竹田との交流は終生のものになった。