2023-01-20 政治・国際

露民間軍事会社ワグネルの元指揮官が亡命 ベラルーシはロシアの参戦圧力で苦肉の策

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ウクライナ侵攻の失敗で、じり貧のプーチン露大統領にとって、〝頼みの綱〟でもあるロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」の元指揮官がノルウェーに逃亡し、亡命申請していることが分かった。一方、プーチン氏からの参戦圧力が高まるベラルーシのルカシェンコ大統領は、苦肉の策として〝ベラルーシ版ワグネル〟の投入準備を急いでいるという。

ノルウェー移民局(UDI)はAP通信に対し、アンドレイ・メドベージェフと名乗る男性がノルウェーへの亡命を求めて避難していることを認めた。ただ、「安全とプライバシーの理由から、この件について、これ以上のコメントを控える」としている。

ノルウェー人弁護士ブリンジュルフ・リスネス氏は、メドベージェフ氏がノルウェー当局に収監され、亡命を求めていることを確認した。メドベージェフ氏はノルウェーの移民警察に引き渡され、その後、首都オスロに移送され、不法移民収容センターで保護されているという。

ノルウェーメディアは、メドベージェフ氏が13日にロシア側からノルウェー国境を越えて不法侵入した後、当局に拘束されたと伝えた。

ロシアの人権問題NGO「グラグ・ネット」によると、殺人罪で有罪判決を受けた後にワグネルに徴用されたエフゲニー・ヌジン氏の部隊をメドベージェフ氏が引き継ぎ、指揮していたという。ヌジン氏はウクライナ軍に降伏した後、ワグネルに身柄を引き渡され、見せしめとして同グループの兵士により、ハンマーで撲殺された。その処刑の様子を撮った映像は11月に公開された。

メドベージェフ氏はシベリア地方トムスク出身で、昨年7月初旬にワグネルに入隊。4か月の契約の満了に伴い、同年11月、ワグネルを辞めたという。12月中旬にはカメラを前に、ウクライナでの戦闘に参加することを拒否した仲間を、ワグネルの兵士が殺害する場面を何度も目撃したと語っていた。同氏はまた、ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏の殺人容疑についても証言している。

西側に逃亡した最初のワグネルの指揮官となったメドベージェフ氏は、自身が関与した部隊の犯罪容疑についても証言する用意があると表明したとグラグ・ネット創設者ウラジミール・オセチキン氏は語った。

ロシアがウクライナに侵攻する以前、何年にもわたりアフリカの政情不安定な国々で活動していたワグネルは、ウクライナの最前線で装備が不十分なロシア軍を補う役割を果たし、その知名度が高まった。

そのワグネルを創設したプリゴジン氏は、プーチン大統領と同じサンクト・ペテルブルグ出身のオリガルヒ(新興財閥)の大富豪で、大統領を公私にわたり支援。長年の間、クレムリンにケータリングサービスを提供してきたことから、しばしば〝プーチンのシェフ〟と呼ばれる。

米国は、2016年の米大統領選挙に干渉した疑いで、プリゴジン氏に連邦当局による逮捕状を発行。プリゴジン氏は数年にわたり、容疑を否定し、報道関係者を名誉毀損で提訴したが、昨年秋、選挙に干渉したことを認めた。

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