注目ポイント
慈聖宮の屋台の前に立って初めて、台北の昔の人たちがどのように朝の時間を楽しんでいたかが分かる。海鮮やサメを燻した昔ながらの豚のレバースープ、排骨湯など種類豊富な美食たち…もちろんビールも欠かせない。
ここの老人たちは、慈聖宮前の人々とは違い、時折、龍山寺の前の広場に座って軽食をとったり、台湾ビールだけでなく高粱酒を飲んだりしている。みんなお酒が強く、少しも酔っているようには見えないので、この辺でお酒を飲む人がいても心配はない。

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ここで飲み食いしている間、彼らが豪快な酒飲みであることとは別に、他にもいくつかのことに気付いた。彼らの服装は、まるでドレスコードがあるかのように、似ていた。数十人が集まるこの広場では、ほぼ全てのおじいちゃん、おばあちゃんが会話をしていて、お互いを知らない人はいないよう。まるで何十年も会っていなかった小学校の同窓会のような雰囲気である。
いずれにしても、寺院の前の広場で食事と酒を楽しむのは、他では味わえない雰囲気で、今までにしたことがない体験が出来るのがとても面白い。
#03:大龍峒|孔子廟前での自然カラオケ
前述の2つの日中の飲み食い体験に比べれば、これから紹介する「大龍峒」は「楽しむための酒宴」と表現できるだろう。もうひとつの台北の老舗グルメタウン、大龍峒は孔子廟や保安宮に近く、趣のある環境に囲まれている上に、おいしい小吃が揃っている。ただし、日陰で暑さをしのげる前述の2か所とは異なり、「大龍峒」は午後4時以降に訪れることをおススメする。なぜなら、正午ほど気温が暑くない一方で、午後4時を過ぎるとますます賑わってくるからだ。
ここで「酒宴」という言葉を使ったのは、保安宮の外の広場で時間が来ると、誰かがカラオケマシンを持ち出し、集会所によくあるプラスチックの椅子を数脚設置する。夕暮れ時になり、先人たちの歌声が聞こえ始めたら、そこはもう音楽と料理の酒宴会場となる。ただ一つ欠点があるとすれば、食べたいものがある時は徒歩5分ほどの大龍街まで行かなければならないことだ。

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だが、この素晴らしい時間を体験するためには、少しくらい歩くのも苦にならない。買ったばかりの陽春麺とコンビニの台湾ビールと共に赤い椅子に座っていると、台湾語の歌が聴こえてくる。蔡秋鳳、陳小雲等台湾の伝説曲に聴き入っているうちに、大龍峒界隈で最もホットな歌手、葉啟田の存在を知ることになった。流れる頻度が高い曲以外では、「愛が勝つ」や「放蕩息子の気持ち」などの曲も頻繁に歌われている。
これらの曲が流れているさなかで、私の持っていた缶ビールもいつの間にかおじちゃん達の持ってくる瓶ビールに変わっていった。そこで、私も勇気を出して「乾杯」という曲を入れてみた。聴いたことのない曲だったが歌集本の曲名を見ていたら、その場にふさわしい曲だと思ったし、いざ曲がかかると、リズムに乗って周りの皆の声が混ざり合うのを楽しむことが出来た。