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中国政府が17日に公表した2022年末の総人口は、14億1175万人で国連によるインドの推計人口14億1200万人を下回った。中国が首位から陥落し、インドが世界最多となった可能性がある。少子高齢化が急速に進む中国では、2035年までに60歳以上が人口の3分の1近くを占める「超高齢化社会」になると予想される。
中国国家統計局は17日、2022年末の中国の総人口(台湾や香港、マカオを除く)が前年末と比べ85万人減り、14億1175万人になったと発表した。減少は1961年以来61年ぶりで、78年に改革・開放政策にかじを切って以降では初めて。経済成長を支えた労働人口の増加は見込めず、習近平指導部は急速な少子高齢化という難題に直面している。
国連は22年に発表した報告書で、23年にインドの人口が中国を抜き、世界最多になるとの見通しを示していた。国連によるインドの推定人口は14億1299万人。
中国の総人口は、多数の餓死者を出した大増産政策「大躍進」運動(1958~60年)の影響があった時期を除き、増加し続けてきた。ところが、中国の22年の出生数も前年から106万人減の956万人となり、6年連続で減少し、2年連続で1949年の建国以来の最少を記録した。1000万人の大台も割り込み、直近のピークだった16年から5割減となった。
この減少は、平均寿命の延びと相まって、中国を人口動態の危機に追い込んでおり、今世紀中に中国とその経済だけでなく、世界に影響を与えるだろうと専門家は予測する。
カリフォルニア大学アーバイン校で中国の人口統計学を専門とするワン・フェン教授は、米紙ニューヨーク・タイムズに「長期的には、世界が見たことのない中国を見ることになるだろう」と話し、「もはや若く、活気にあふれ、増え続ける人口ではない。人口の観点から見て、高齢化と縮小してゆく中国だ」と語った。
過去40年間、中国は経済大国として、また世界の工場として台頭してきた。平均寿命が延びたことで高齢者が増え、出生数が減っている。2035年までに中国では4億人が60歳以上になり、人口の3分の1近くを占める「超高齢化社会」になると予測される。
同紙によると、この傾向により世界経済のエンジン役を果たしてきた中国の急速な成長を維持するため、十分な労働人口が存在しなくなる日が来ることも懸念されるという。労働力不足は、税収と、すでに大きな圧力にさらされている年金制度への拠出も減少させることになる。
中国当局は人口減少への対応策として、16年には35年間実施されていた「一人っ子政策」を緩和し、家族が2人の子供を持つことを可能にした。また、21年には制限を3人にまで引き上げたが、少子化には歯止めがかからない状況だ。
政府は少子化対策として、若いカップルや核家族に子作りを奨励し、現金支給や減税など、さまざまな優遇措置を取ってきた。さらに、習主席は人口問題を優先事項とし、「出生率を高めるための国家政策」を提唱。だが専門家は、すでに中国の出生数の急落は不可逆的な傾向を示していると分析する。