2023-01-17 政治・国際

半導体覇権狙う中国、米国は供給網の再構築へ 日米蘭が先端チップ製造装置の輸出禁止調整

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注目ポイント

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「半導体が今や石油と同じくらい、現代経済の中心を担うことを米国はこの2年で完全に理解した」と要約した。中国が巨額の補助金を投入し、半導体覇権をもくろむ中、米国は日本などパートナー国と協調し、それを阻止すべく半導体の生産とサプライチェーン(供給網)の再構築を急いでいる。

デジタル化された現代社会では、例えば、「電動工具には通常、位置を特定するBluetoothのチップが付属。電化製品には電力消費を制御するための半導体を使用。2021年の平均的な自動車1台には600ドル相当のチップが約1200個含まれ、この数字は2010年の2倍」だとWSJ紙は指摘する。

そんな中、半導体不足を引き起こしたサプライチェーン危機は大きな教訓となった。米コンサルティング会社アリックスパートナーズによると、米自動車業界は昨年、半導体不足により2100億ドル(約26兆8550億円)の売上を失った。と同時に中国との競争は、中国政府が民生用または軍事用の主要な半導体部門を支配し、米国の部品へのアクセスを阻止する可能性があるという懸念を浮かび上がらせた。

現在、米政府と企業は、米国内の製造業を強化し、半導体の供給を保護するための取り組みに数十億ドルを投じている。さらに、米半導体産業協会によると、2020年以来、半導体メーカーは全米で4万人の雇用を創出するため、2000億ドル(約25兆5760億円)相当の40以上のプロジェクトを進めている。

これは、国際経済競争の輪郭を定義し、今や国の政治的、技術的、軍事的優位性を決定付ける半導体産業のための大きな賭けだ。

技術系デジタルメディア「日経クロステック」は先月、米国が恐れるのは、中国が人工知能(AI)技術や5G(第5世代移動通信システム)の開発を加速させ、米国をしのぐことで、国家安全保障が脅かされる状況だと解説した。そのため、両技術に欠かせない先端半導体の製造阻止に急ぐのだという。

そのきっかけの1つは、中国が2017年に制定した「次世代人工知能(AI)発展計画」で、計画には「2030年までに人工知能技術を世界トップレベルに引き上げ、国防力などを向上させる」という記述があることだったと同メディアは指摘する。その上で、「AIを搭載して知的に動作する兵器の開発は各国で進む。中国の軍事力強化を阻止するには、AI関連技術に欠かせない技術の開発を食い止める必要があるというわけだ」としている。

一方、バイデン大統領は先週、カナダのトルドー首相、メキシコのロペスオブラドール大統領と会談し、半導体の生産やサプライチェーンの強化など、経済関係を深めることで合意。米国は戦略的ハイテク産業への投資を増やすため、2023年初頭に北米で半導体フォーラムを開催する計画を示した。

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