2023-01-16 政治・国際

失態続くウクライナ侵攻、露軍で究極人事 ゲラシモフ参謀総長を最高指揮官に任命

© Photo Credit: GettyImages Valery Gerasimov

注目ポイント

プーチン大統領は先週、ウクライナ侵攻を指揮するスロヴィキン総司令官をわずか3か月で更迭し、ロシア軍制服組トップで最側近の1人、ゲラシモフ参謀総長(67)を後任に任命した。ロシアが2月に侵攻を開始して以来、一連の上級指揮官をめぐる交代劇で究極の人事となった。ソ連崩壊後、参謀総長のポストを最も長く務めるゲラシモフ氏の任命が何を意味するのか―。

ロシア軍は14日、エネルギー施設や集合住宅など、ウクライナ全土で民間を狙ったミサイル攻撃を激化させた。東部ドニエプロペトロフスク州の州都ドニプロでは、集合住宅に着弾して一部が崩壊した。同州のレズニチェンコ知事によると、15歳の少女を含む30人が死亡、30人以上が不明、少なくとも60人が負傷した。救出活動が続いており、死傷者は増えるとみられている。

そんな中、プーチン政権下で軍事作戦を批判することを許されているナショナリストの軍事ブロガーの多くは、これまでロシア軍トップであるゲラシモフ参謀総長を非難してきた。過去15年間で近代化され、膨大な予算をかけて再装備されたはずの超大国の軍が、はるかに小さい隣国をいまだに征服できずにいるからだ。

ウクライナや西側のみならず、ロシア国内の批評家までもがロシア軍は詰めが甘く、準備も装備も不十分で、対応が遅く統一性が欠如し、しばしば指揮系統の重大な問題を抱えていると酷評する。

そんなロシア軍の流れを有利に転換するため、予定外の部分動員が導入されたが、失敗だったとの見方もある。そのためなのか、ゲラシモフ氏は表舞台にはほとんど登場せず、左遷されたという噂が何か月もささやかれていた。

民間軍事会社「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏と、ロシア南部チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフ首長の両者は、ゲラシモフ氏をあからさまに批判し、戦場での成功は彼らより優れた準民間組織によるものであると主張している。

一方、国防省の擁護者は、開戦時のロシア軍の戦況は芳しくないものの、過去10か月間に兵站、技術面、指揮系統で明らかになった問題の多くは解決されたか、解決されつつあるとしている。

 

任命の意味

中東のニュース専門局アルジャジーラによると、強硬派の軍事アナリスト、イゴール・コロチェンコ氏は、プーチン氏の決定は、ウクライナが米国のHIMARS(ハイマース)など、西側の長距離ロケット砲がすでに前線に配備されたことに加え、西側の装甲戦闘車両や戦車の提供を受ける見通しになったことに起因すると指摘する。

実際、英国はウクライナに主力戦車「チャレンジャー2」や追加の砲撃システムを提供し、支援を強化する意向を示した。英メディアよると、供与されるのは14両で、欧米の主力戦車が提供されるのは初めて。英国政府はまた、30両前後の自走砲AS90を投入することも検討している。

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