注目ポイント
日米両政府は11日(日本時間12日)、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を米ワシントンで開催した。共同文書を発表し、日本が保有を決めた反撃能力(敵基地攻撃能力)について「効果的な運用へ協力を深化」と明記。中国や北朝鮮への抑止力強化が狙いだ。また、中国による「台湾有事」を念頭に、南西諸島防衛を重視する姿勢を打ち出した。
2プラス2には日本側から林外相と浜田防衛相、米側はブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席。昨年1月にテレビ会議方式で開いて以来1年ぶりとなった。両国は軍事活動を含む中国の動向について、「最大の戦略的挑戦」と位置付け、ブリンケン氏は会談後の共同記者会見で、「中国は、米国とその同盟国やパートナーが直面する最大で共通の戦略的挑戦であることを認識している」と述べた。
オースティン氏は、対艦ミサイルを含む重要な能力をもたらす海兵沿岸連隊(MLR)を日本に導入する計画を発表した。共同発表文書によると、沖縄県駐留の米海兵隊を25年までに改編し、離島有事に即応するMLRを創設すると明記された。
MLRは対艦ミサイルなどを装備。有事の際は島嶼(とうしょ)部に分散展開し、陸上から敵艦艇などの活動を阻害する。強引な海洋進出を続ける中国への対応力を強化するもので、オースティン氏は「地域の平和と安定を維持する同盟の能力を強化するものだ」と強調した。
一方、日本側は防衛費増額や敵のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有など、岸田政権が先月、閣議決定した安保関連3文書見直しで示した防衛力強化の内容を説明した。
米側は「同盟の抑止力を強化する重要な進化」として「強い支持」を表明。両政府は「米国との緊密な連携の下での日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間の協力を深化させる」ことを決めた。
安保関連3文書とは、外交や防衛などの指針である「国家安全保障戦略」、防衛の目標や達成する方法を示した「国家防衛戦略」(現・防衛計画の大綱)、および自衛隊の体制や5年間の経費の総額などをまとめた「防衛力整備計画」(現・中期防衛力整備計画)の3つ。
また、中国やロシアが近年、宇宙空間の軍事利用の動きを活発化させ、人工衛星を無力化する技術の開発を進めていることを背景に、宇宙空間も米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約5条が適用される対象範囲内になるとの考えを共同文書で打ち出した。
宇宙に関しては「国境」という概念はないが、日本の人工衛星は日本の施政下にあることを確認し、もし他国からの攻撃を受けた場合は日米が連携して対処する。そのことをあらかじめ明確にすることで、抑止力を高めることを目的とする。中露は他国の衛星機能を奪う「衛星攻撃衛星」(キラー衛星)の開発に取り組んでいるとされ、日米は新たな安保上のリスク要因として警戒を強めている。