2023-01-11 政治・国際

新変異株「XBB.1.5」が米国で猛威振るう 専門家「最強感染力」も過剰な心配は無用

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注目ポイント

新型コロナウイルスのオミクロン株が変異した亜種「XBB.1.5」がこのひと月、米国を中心に猛威を振るっている。専門家はこれまでで「最強の感染力」として警戒。ただし、これまでのオミクロン変異株よりも深刻で有害だというデータを示すものはないとしている。

新型コロナウイルスが出現してから3年。新たな亜種「XBB.1.5」が、米国の一部で急速に置き換わっている。米疾病対策センター(CDC)はこのほど、今年になって最初の1週間で、米国での新規感染者のうち推計27.6%が同亜種に感染したと発表した。12月初めはわずか2%だった。特にニューヨーク州などがある米北東部では驚きの70%以上がXBB.1.5とみられる。

そのため世界保健機関(WHO)は、XBB.1.5について「この増え方について懸念を抱いている」とし、これまでのオミクロン亜種の中でも「最強の感染力」を持つとしている。

ただし、米紙ワシントン・ポストによると、これまでのところ、XBB.1.5が、以前のものより毒性が強いという証拠はないという。

米ピッツバーグ大学のヴォーン・クーパー教授は、「人びとがワクチンを接種したため、XBBはこれまで進化しなかった。それが進化し多くの人たちが同時に複数のウイルスに感染したため」と説明した。

オミクロン株は2021年冬から爆発的に感染拡大して以来、免疫をすり抜け、米国でのほとんどの感染を引き起こした。XBBは、オミクロン株の「BA.2」系統の2種類が組み合わさった「組み換え体」と呼ばれるタイプだ。

XBB.1.5を研究するウイルス学者は、同亜種が他の免疫回避型の以前のものより抗体を回避するのに優れているようには見えないが、細胞への結合と複製する能力に優れているとみている。つまり、一定の地域内では近縁種よりも支配的な株になりやすいが、必ずしも重症化につながるわけではないという。

米保健当局は、オミクロン亜種用に処方された新しいワクチンの接種を呼び掛けている。

米国ではコロナによる入院患者数は、7日間で平均4万8000人近くに達し、昨年2月下旬以降最高値だが、昨年の同時期に記録した15万人のピークをはるかに下回っている。それでも、最新のワクチンを接種したのは高齢者で38%、全体で15%と低調だという。

米ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策調整官アシシュ・ジャー医師は「ごく最近に感染したり、2価ワクチンを接種していない人は、感染に対する防御ができていない」と4日にツイート。「XBB.1.5が心配か?イエス。これにより、また大きく後退することが不安か?それはノーだ」と続けた。

ワクチンによって生成された抗体が、XBB.1.5をブロックするのに苦戦していることを示す研究結果により、懸念が生じたことは事実だ。だが、それはワクチンが機能しないことではないという。昨年のほぼ1年間、免疫を回避する変異体からの感染急拡大による重症化するケースは増えていない。そのため専門家は、ワクチン接種やこれまでの感染により、多くの人はこのウイルスに対する回復力を増していると分析する。

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