2023-01-10 観光

流水席って?―台湾の高級コース料理、コスパ最高―

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

冠婚葬祭の食事はよくレストランやホテルが利用されますが、台湾では路上に大型テントを張ってそこで料理して同じく路上に並べられたテーブルに運んで食べてもらう形の宴会があります。昔からある伝統的な路上宴会で、「流水席」と呼ばれていますが、最近ではオシャレじゃない、野暮ったい、かっこ悪いなどと言って敬遠する若者もいます。でも、流水席はコスパの面でも料理の味や質でも最高で、台湾の活力の源を感じることができる「古早味」な宴会の形です。

路上披露宴なんてイヤ!

年が明けたばかりの1月2日、台北に住む一人の女性が匿名掲示板にこんなことを書きました。

「高雄の男性と結婚することになって、彼のパパが高雄で里長(選挙で選ばれた町内会会長に相当、2022年9月6日『美女軍団が参選―変わりゆく里長選挙』を参照)やってんだけど、私たちの披露宴を路上でやろうって言ってるの。大学の友達も来るし、人生の一大イベントなんだから高雄漢来飯店でやりたいわ。今は1卓2万元以上が普通なのに流水席って1万元以下でしょ?ほんとに食べられる料理出てくるの?今は2023年よ。田舎の人は今でも路上で宴会するのが好きなの?」

当然この投稿は即刻大炎上、多くのネット民に攻撃されました。すると4日、台北の女性は反論しました。「コスパがいいとか、お腹いっぱいになるとか、残った料理はお持ち帰りできるとか、貧乏くさいこと言わないでね。陳若儀、林志玲、林依晨(3人とも台湾の有名人)が流水席で披露宴やった?やってないでしょ?」

この掲示板上の痴話げんかは1月9日現在、まだ続いています。

今も盛んな路上宴会…流水席(リョウスイシイ)

披露宴だけではなく、告別式、選挙の決起集会、檀家に感謝する廟の宴会(廟会という)など今でも体育館、学校の校庭、或いは片側車線か道全体を封鎖して厨房と宴席を設ける「流水席」は盛んに行われています。告別式を除いて基本の色は赤です。赤い大型テントや赤いテーブルをセッティングし、総鋪師(台湾語でツォンポーサイ)と呼ばれる料理長を中心に現場で手際よく大量の料理を作ります。宴会の規模は様々ですが、数百人から千人規模の宴会まであるようです。

会場の上座にステージが作られる場合もあって、決起集会では主要人物がステージ上で雄叫びをあげたり、演説や歓迎・御礼のあいさつをしたりします。またプロの歌手を招待して歌を歌ってもらったり、ポールダンスショーを見たりします。参加者自らがカラオケをする場合もあります。一昔前は流水席でストリップショーまでやっているところもありました。

夏場は扇風機の風だけでけっこう熱いし、新婦のお色直しやお客さんのトイレ問題など大変な部分はありますが、今でも多くの人が流水席を利用しています。

昔ながらの高級料理を最高のコスパで

レストランやホテルと比べて、料理に携わる人以外の人件費、設備費、電気代などがかからない分だけ流水席はコストが安くすみます。その代わり高級食材を使ったり、量を増やしたりして流水席業者も努力、工夫しています。ソフトドリンクやお酒などはセルフサービスのところが多く、大きなクーラーボックスに大きな氷が入れてあって、その中にビールやサイダーなどが冷やしてあります。またデザートとして一人一人にパイントのアイスクリームを用意している宴会もありました。廟会では大豆で作った焼き鳥やハンバーグステーキ、ミートローフなど、肉を使っていないことが信じられないくらいおいしい精進料理を出す廟があります。披露宴についていうと、流水席独特のコース料理があって、定番は、カラスミ、揚げ団子(炸湯圓)、高級乾物スープ(佛跳牆)、烏骨鶏スープ、蒸し魚、豚肉の角煮(東坡肉)、豚足ソーメン、白菜の煮込み、海鮮オードブルなどです。台湾を訪れた日本人観光客が流水席に出会い、席に座ってこれらの料理と雰囲気を体験するのは難しいかもしれません。でも、台湾に住んでいる友人か旅行社に聞いてみてください。鼎泰豊や阜杭豆乳店などとは、文字通り、一味違った台湾の高級中華料理が楽しめるかもしれません。

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