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「ゼロコロナ」政策からの方向転換に伴い、中国政府がこれまでの厳格な検疫措置を撤廃したことにより、海外旅行に出かける中国人が一挙に増えることが確実になった。そんな状況を大いに歓迎しているのが東南アジアの国々だ。中でも人気の観光国タイでは、再び多くの中国人が訪れることに多大な期待を寄せている。
コロナ禍でこの3年間、仕事がほとんど無くなったタイでツアー会社を経営するアンチャリーさんは、中国人観光客がまもなく再び海外に旅行できるようになることに安堵していると英紙ガーディアンに語った。タイ北部最大の都市チェンマイで勤務するアンチャリーさんは、「観光業界関係者に聞くと、戻ってくるのを一番心待ちにしているのは中国人観光客だと話している」と明かした。
中国は8日、入国の際に実施してきた厳格な検疫措置を撤廃し、中国人が今後海外で休暇を過ごすことを容易にした。これにより、パンデミック前は中国人旅行者に大きく依存していた東南アジアを含む、より広い地域の観光業が活性化することが期待される。
「CMパラダイス・ツアー」を運営するアンチャリーさんは、チェンマイの有名な寺院ワット・プラタートドーイステープや滝、山岳地域のグループツアーの再開に向け、中国語を話せるガイドや運転手を急募しているという。
検疫撤廃が先月発表された直後から、中国の旅行サイトはすぐに予約申し込みが殺到。その一つ、オンライン旅行会社・去哪児(クナール)によると、撤廃発表15分で航空便検索が7倍に増加。人気上位はタイや日本、韓国だという。
中国の「ゼロコロナ」政策の終焉とそれに続く感染爆発により、医療機関はすぐにひっ迫し、世界数十か国が中国からの渡航者に対して新たな規制を課すようになった。英国、インド、米国などは現在、中国からの渡航者にPCR検査を義務化している。
ところが、東南アジア諸国は中国からの観光客に特別な規制をしていないという。
ガーディアン紙によると、タイは全ての渡航者にワクチン接種済証明、過去6か月以内に感染した人については、完治証明の提示を決めているが、詳細についてはまだ発表されていない。近隣マレーシアの場合は、入国者全てに検温をするとし、同国のアンワル・イブラヒム首相は、「どの国に対しても差別的措置は取らない」と述べた。
地元メディアによると、マレーシアでは、国民の一部が中国人旅行者の渡航再開について否定的な反応を示しているが、同国のチョン・キング・シン観光相は、マレーシアが海外からの旅行者を歓迎していないような印象を与えないよう、「発言には注意するように」と戒めた。
一方、チェンマイでレストラン「カオ・ソイ・ニマン」を経営するピヤナットさんは到着した観光客を選別することには賛成だという。「彼らは予防接種カードを確認し、PCR検査を義務化する必要がある。それが100%ではないことは承知しているが、何もないよりはましだ」と言う。