2023-01-08 観光

宴席料理からストリートフードへ:爌肉飯

注目ポイント

かつて著名な人類学者のクロード·レヴィ=ストロースは「料理の三角形」という定義を打ち出した。それによると、直火で焼いたものや燻製は「自然」な調理過程であり、一方、食材を鍋に入れ、水を介して火を通す方法は「文化」的行為に分類される。この概念は世界中の料理に当てはまり、台湾においては、脂身のついた豚肉と風味豊かな醤油を一緒の鍋に入れて火にかける料理は、一つの文化と言え、決して侮ることはできないのである。

文・蘇俐穎 写真・莊坤儒 翻訳・山口 雪菜

B級グルメとして知られる爌肉は、もとは宴席料理に欠かせないご馳走の「封肉」だった。

台湾語では、食材を水分で煮る料理方法のことを「煮」「炕」「𤉙」と書く。フードライターの陳淑華の著書『灶辺煮語』によると、「煮」は水を介して火を通すこと、「炕」はずっと沸騰させて食材を柔らかく煮込むことで、家庭料理の豚の醤油煮は「𤉙豬肉」と呼ばれる。「炕」はしっかりした食材を柔らかく煮込むことを指し、食堂などで出される豚の角煮は「炕肉」、一般には「爌肉」「焢肉」などと呼ばれる。食文化を研究する台湾師範大学台湾語文学科の陳玉箴教授は、爌肉の起源は宴会料理の「封肉」だと言う。豚肉を主なたんぱく質源とする台湾で、封肉は最も代表的な料理と言える。

バラ肉の塊を長時間煮込んだ「大封」は昔はおめでたい席でしか口にできなかった。そこから生まれた小さな肉の塊を煮た料理は「小封」、より細かい肉の場合は「肉燥肉」と呼ばれ、すべて同じ源から生まれた親戚関係にある。

レストランを経営して22年になる黄守正は、各系統の爌肉料理を融合させ、独自の一品を創作している。

さまざまな系統の流れを受け継ぐ

福建料理から来た台湾の爌肉(コンロウ)だが、さまざまな系統の料理が混在する台湾では、蘇州·杭州料理の東坡肉や、客家料理の封肉、梅干扣肉など類似する料理もよく食べられる。

フュージョン料理レストラン「阿正厨坊」を経営する阿正シェフ、黄守正はこう説明する。台湾の封肉と客家の封肉、それに東坡肉の調理方法に大きな差はなく、食材や調味料などに細かな違いがある程度だ。東坡肉は紹興酒を用い、台湾料理と客家料理は米酒を用いる。台湾の封肉にはタケノコを入れることがあり、客家の封肉には梅干菜(カラシナの古漬け)やメンマを入れることもある。日本の職人から京都料理を学んだ彼は、各種技法を融合させ、自分のレストランでは独特の「蒜苗長方」を出している。

彼は宜蘭県の出身で、母親がよく蒜苗(葉ニンニク)と塩漬け肉の料理を作っていたところから思いついたという。これに、余計なものを取り除いていく日本料理の美学を生かして食材本来の味を出している。「私の料理は、味付けではなく、食材の味を最大限に引き出すことを目指しています」朝6時、彼は市場に黒毛豚と宜蘭の葉ニンニク、トウガラシを買いに行く。これでほぼすべての食材だ。調味には紹興酒も米酒も使う。紹興酒は香りがよく、米酒は甘味がある。また、砂糖の代わりに甘味の穏やかな本みりんを使う。

この料理に手間はかからないが、時間はかかる。大きな塊肉は最初に鉄鍋で焼き、表皮をそぎ落とす。それを鍋に入れて醤油と一緒に火にかけ、煮汁は5回沸騰させ、沸騰したら火を消して肉を浸したまま3日間寝かせる。こうすると葉ニンニクのさわやかな甘みが肉の香りと一体化し、赤身肉もパサつくことなく、しっとりと仕上がるのだそうだ。

白いご飯に豚の塊肉をのせ、豚の角切りが入った醤油だれをかけ、大根の漬物を添える。これが台湾式爌肉飯の定番だ。

24時間いつでも食べられる爌肉飯

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