注目ポイント
「ゼロコロナ」政策を事実上、断念した中国で先月から激増する新型コロナウイルス感染を警戒し、各国が中国からの渡航者にウイルス検査を義務付けるなど、水際対策として入国条件を厳格化していることに、中国政府が激しく反発。渡航制限を実施した国に対する対抗措置をちらつかせている。
中国外務省の毛寧報道官は、3日の定例会見で、「一部の国が採用している中国を標的とした入国制限には科学的根拠がなく、一部の過度な慣行はさらに容認できないと考えている」と述べた。
「われわれは政治目的でコロナ対策を操作しようとする試みには断固として反対し、相互主義の原則に基づいて対策を講じる」と警告した。ただ、具体的な対抗措置については明らかにしなかった。毛報道官の発言は、この問題に関する中国側の公式見解としては最も強いものとなった。
中国の首都・北京(人口約2100万人)では、すでに住民の8割がコロナ感染したとする報道も出ているが、西側各国は、中国当局が信頼に値するデータを公開していないと批判している。世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏も4日、中国が公表している新型コロナウイルス感染症による入院者数や死者数について、実態が過少報告されていると指摘した。
そのため、オーストラリアとカナダは今週、中国からの渡航者に対し、搭乗前にコロナ検査を受けることを義務付けた。米国、インド、日本、韓国、および欧州など十数か国は、中国側からの感染状況を示すデータ不足に対する不満や、新たな変異株が出現する警戒感から、中国からの渡航者へのより厳格なコロナ対策を発表した。
また、北アフリカのモロッコは3日から、国籍を問わず中国からの渡航者の入国を全面的に禁止した。
一方の中国は、海外からの渡航者に対して最も厳しい入国規制を課している。これまで全ての入国者に義務付けてきた5日間の検疫については撤廃する予定だが、搭乗前48時間以内のPCR検査陰性という条件は継続するとされる。
米ホワイトハウスのジャン・ピエール報道官は、中国からの渡航者から「国民を守るために慎重な公衆衛生措置を講じている国に対し、中国政府が報復する理由はない」とし、それらの制限は「公衆衛生と科学に基づいている」と述べた。
フランスのエリザベート・ボルヌ首相は、コロナ検査の必要性を強調。4日から中国からの入国者に対し、搭乗前48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明を提示することを義務化し、到着時には無作為検査を開始した。
英国は5日から、中国からの渡航者に対して搭乗前のPCR検査を義務付けた。ハーパー運輸長官は、中国政府がコロナのデータを共有していないため、「情報収集」のために必要だと説明。検査で陽性となった場合にも隔離の必要はないとしている。