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国際通貨基金(IMF)のトップであるゲオルギエバ専務理事は1日、世界経済にとって2023年は、グローバルな成長の主要原動力である米国、欧州、中国の景気が減速する厳しい年になるだろうと警告した。
ゲオルギエバ氏は、米CBSの元旦のニュース番組「フェイス・ザ・ネーション」に出演し、世界経済が今年は昨年よりも厳しいものになるだろうと述べ、「その理由は米国、欧州連合(EU)、中国の3大経済圏が同時に減速しているからだ」と説明した。
昨年10月、IMFは2023年の世界経済の成長見通しを下方修正した。これは、ウクライナでの終わりの見えない戦争による継続的な足かせ、インフレ圧力、および米連邦準備制度理事会(FRB)など中央銀行によるインフレ対策としての高金利政策を反映しての結果だ。
12月には中国指導部が「ゼロコロナ」政策を急きょ廃止し、混乱の中で経済再開に乗り出したが、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大。中国の人びとはすでに疲弊している。習近平国家主席は、政策変更後、初となる新年のメッセージで、中国が「新たな段階」に入る中、人民のさらなる努力と団結を求めた。
そんな中国についてゲオルギエバ氏は、「昨年の中国の成長率は、40年ぶりに世界の成長率と同等かそれ以下になる見通しだ」と述べた。
昨年12月下旬、中国を訪れたゲオルギエバ氏は、今後予想されるコロナ感染の大波が、今年の経済にさらに打撃を与え、アジア地域と世界の両方の成長を鈍化させる可能性が高いとした。
「先週訪問した中国では、ゼロコロナのバブル方式が敷かれた都市にいたが、いったん人びとが移動を始めると、その状態は続かない」と指摘。その上で、「今後2か月間は中国にとって厳しい状況になるだろう。中国の成長への影響はマイナスとなり、地域への影響もマイナス、世界の成長への影響もまたマイナスになるだろう」と語った。
IMFは昨年10月の時点で、中国の22年の国内総生産(GDP)成長率を3.2%とし、世界全般の見通しと同程度であると予測。同時に、中国の年間成長率は23年に4.4%と加速するが、世界的な経済活動はさらに減速するとみていた。
ところが、ロイター通信は、今回のゲオルギエバ氏の発言が、スイス・ダボスで今月後半に開催される「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)で、IMFが発表する中国と世界の成長見通しの両方が再び下方修正されることを示唆していると伝えた。
ただ、ゲオルギエバ氏によると、「米国経済は際立っており、世界経済の3分の1に影響を及ぼす経済収縮を回避できるかもしれない」と分析。「米国は最も回復力があり、景気後退を回避できる可能性がある。労働市場は依然として極めて堅調」だとした。