2023-01-02 観光

台湾一の女神——媽祖の祭り

注目ポイント

旧暦の3月、台湾各地で年に一度の媽祖の祭典が行なわれる。多くの廟の媽祖が「進香」のために廟から出ると、通りでは住民がこぞって神輿をお迎えし、信者と触れ合う。中でも台中の大甲媽祖と苗栗県通宵の白沙屯媽祖の活動が最も有名で、ディスカバリーチャンネルは大甲媽祖の巡行進香活動を世界三大宗教祭典の一つとして紹介した。また2010年、文化部文化資産局は「大甲媽祖巡行進香」と「北港朝天宮迎媽祖」「白沙屯媽祖進香」を国定の重要民俗活動に指定した。媽祖信仰は世界的な無形文化遺産であり、台湾は世界の媽祖信仰の中心地なのである。

「大甲媽祖の巡行の隊列では、報馬仔、頭旗、頭灯、三仙旗、開路鼓、太鼓陣などが先頭に立ちます。中間には繍旗隊、哨角隊、三十六執士団、福徳弥勒団、福徳団、太子団、神童団、荘儀団などの陣頭があり、その後に媽祖の神輿が続きます。清代の服を来た人々が交代で神輿を担ぎ、前吹、涼傘、令旗、日月傘などが神輿を前後から守ります。この隊列にはそれぞれ象徴的な意味があり、この女神の恩恵の深さと隊列の厳かさや華やかさを示しています」と呂玫鍰は言う。

一方、苗栗県通宵の白沙屯拱天宮は集落の廟で、信者にとっては非常に親しみがあり、苦しみから救ってくれる慈悲深い神だ。毎年、白沙屯媽祖は400キロほど離れた北港の朝天宮まで徒歩で参拝する。その巡行には定まったルートはなく、神輿が進む方向や、止まる場所はすべて媽祖の御指示次第である。ルートが決まっていないことから、余所の土地の信者との交流の機会も増え、「媽祖様が外庄を興す」と言われる。近年、白沙屯媽祖の神輿は市場や学校、町役場や病院などにも自ら入っていくなど、民生に関わる場所を練り歩き、それぞれの地域の住民と交流することから、ますます親しみが増している。

「基本的に、進香活動は神の名の下に自分の土地を離れ、余所の土地の宗教や政治、経済、住民などの各種リソースとのつながりを持ち、互いの関係を強化するものです」と呂玫鍰は言う。言い換えれば、進香は移動することで廟や神々の交流を深め、神と神、人と神とのさまざまな儀式を通して地域を超えた交流をもたらすのである。

写真は1980年、北港朝天宮の媽祖の生誕日の巡行の様子。(外交部資料)

移動はつながりを生む

以前、白沙屯媽祖の進香活動に参加する人(香灯脚)は、地元の住民だけだったが、今では9割以上が他の土地の人である。白沙屯の進香のルートは決まっておらず、練り歩く速度も一定しないため、媽祖の神輿に付き従って歩く(随香)のは簡単なことではない。そのため、信者の間では「歩ける者は、歩けない者を待つ」と言われてきた。神輿に随行する人々が、互いを助け合い、世話をし合うという意味である。巡行する媽祖の神輿がUターンして元の道を戻ったり、その場で足踏みすることもあり、それも「追いつかない者を待つ」ためだと言われてきた。

白沙屯媽祖の進香の途中では、飲食や宿泊などは沿道の信者が自発的に提供する。これらを提供する人々も、どれだけの量を準備するべきか、必ず事前に媽祖の神意をお尋ねする。神意に従った量を準備すれば、それらは必ず信者たちに求められ、余ってしまうことはない。最近は、進香団の信者が手作りした御守りや装飾品、キーホルダーなどの「結縁品」(媽祖と縁を結ぶ記念品)を用意し、沿道で出会った信者や宿を提供してくれた人に贈るようになった。小さなギフトだが媽祖とのご縁を象徴するもので、縁が次々と広がり、媽祖の慈悲と善が伝わっていくのである。

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