注目ポイント
台湾有事などを想定して戦後の安保政策を大きく転換している日本。国を守るためにギリギリの選択を迫られつつある台湾。年末も西側陣営に明らかな挑発を続けていた中国の姿勢は、日本国内の民間の不動産取引にも影響を与えている——山本一郎さんの月イチ連載です。
奇しくも昨年12月26日の中国空軍・海軍による大規模演習において、台湾の防衛識別圏に入っちゃうという、結構堂々たる侵入をしてしまうという事件がありました。これ、明らかに挑発だと思うんですよね。やれるもんならやってみろや的な。中国もアメリカ下院議長ナンシー・ペロシさんの訪台は西側陣営による挑発だという見方を強めている中でこれであるというのを考えると、メッセージとして本格的な戦争にはしたくないけど万が一何かあったときのための大義名分は考えておこうという危険なノリを双方がエスカレーションさせているといっても過言ではありません。
台湾もギリギリの選択を迫られつつある
台湾の側もおおいに反応していますが、足元で言うならば、台湾は東アジア各国特有の少子化問題に直面し、どうやら2022年の絶対的な出生数は15万人を切るのではないかという予測があり、現在の台湾軍の職業軍人数は16万人あまりと、本来の充足人数を約7,000人下回っていることになります。人口2,300万人あまりの台湾において、合計特殊出生率が1.0を割っている状況ですから、国を守るのに充分なマンパワーをどう捻出するのかは喫緊の国家的課題になっています。
それもあって、台湾が一般的な兵役の期間を現行の4ヵ月から1年にする議論をするのも他に選択肢がないという点で致し方ない一方、若者にとって有為な1年を兵役に取られてしまうと今度は台湾の生命線でもある産業力に悪い影響が及ぶ可能性も高くなります。まさにギリギリの選択を迫られつつあるというのが台湾の現状ではないかとも感じます。
で、最近こういうきな臭さゆえに日本の都市部で不動産を購入する外国人に台湾ルーツの皆さんの割合が増えてきました。ちょっと前から香港人の皆さんが増えているのも事実なので、政情不安からより安全なところへ家族と逃避しようという動きが強まるのもある程度は仕方のないことなのかなと思います。かつて、日本への留学を支援してあげていた台湾人の子たちも、日本でのビジネスを強化する目的でご家族ごと日本に長期滞在、何となれば不動産も買って日本に帰化するぞという決意を聞かされてビックリしました。
それもこれも、地政学的な問題や指導部のメンツで緩衝地帯の人たちの生活が突風に煽られ大変なことになるわけでありまして、粛々と対応は重ねていくにせよもう少しどうにかならんかな、と毎回思うところなんですよね。ほんとに。