注目ポイント
台湾有事などを想定して戦後の安保政策を大きく転換している日本。国を守るためにギリギリの選択を迫られつつある台湾。年末も西側陣営に明らかな挑発を続けていた中国の姿勢は、日本国内の民間の不動産取引にも影響を与えている——山本一郎さんの月イチ連載です。
「遅れてきた夏休みの宿題」に踏み込んだ日本
不動産の仕事を手伝っていると、日本でもよく「外資系に土地を買われる」とか「外国人による不適切な取引で水源地が奪われている」などの告発めいた話はよく聞きます。
先日、日本の原子力発電所近くとか、空港、自衛隊施設の周辺を金主不明の不思議な不動産ファンドが買おうとしている件について記事にしたところ、いままでお目にかかったことのないタイプの人たちからコンタクトがあったりしました。日本政府がようやく対応し、これからは外国人が外国籍のまま隠れて日本の土地や建物を買うときの制限を付ける方向に話が進んでいくのだろうと思いますが、重要土地利用規制法(2021年施行)や重要土地等調査法(2022年全面施行)など、緩やかに対策が進んできている分野です。
外国人の「重要土地」買い漁り、もう足許まで来ているやばい事態やばい人たち|現代ビジネス
これらは、いまは亡き安倍晋三さんがその政権の最後に手がけた骨太の方針(2020年7月17日)で方向づけられたもので、良くも悪くも置き土産的にちゃんと対処しないとあかんよなというものです。
で、この流れもあって、米中対立というか武力行使も辞さない中国側の姿勢に呼応するため、後継岸田政権において防衛費の増額というど真ん中の議論が始まり、その財源として後の世代に負担を掛けないという名目での「増税」論議が出るようになりました。少子化が進む日本で、国の安全を守るために志願した子どもたちを戦場に送るのは忸怩たるところではありますが、ある意味で、これもまたいままで安全保障に関してきちんとした議論に基づいた国防計画が策定されてこなかったという面において「遅れてきた夏休みの宿題」にも似た状況にあることは変わりありません。
それもあって、先般閣議決定された防衛三文書は割とパンチが効いた内容であって、現段階の日本が対外的に示せる態度としてはもっとも無難かつ正当なものとしてよろしいのではないかと思ってもおります。もちろん、内外での評価は様々ですが、いろんな意味で日本がもはや避けて通ることのできない東アジアの安全保障問題については本稿でもかねてより指摘してきたことでもあり、踏み込むこと自体はまあしょうがねえんじゃないのかなと思います。
国家安全保障戦略について(内閣官房;閣議決定12月16日)|内閣官房
なんでまたそんな日本の安保政策について語ってるのかと言えば、これはもう台湾有事などを想定してのものだからです。これも何度も書いてますが、台湾での戦争は日本の戦争、ひいてはアメリカもオーストラリアもイギリスも巻き込んだ、ある種のドミノ化必至の懸念の最たるものであることは言うまでもありません。