2022-12-28 政治・国際

米映画産業にとって2022年は低調な1年 ヒット作少なく、人気スター投入も大コケ連発

© Reuters /達志影像

注目ポイント

米映画産業は今年、国内の劇場での興行収入が73億5000万ドル(約9766億円)にとどまる見込みで、パンデミック前より33%下回ったことを明らかにした。大ヒット作が少なかったことや、動画配信サービスを利用した在宅鑑賞が、映画ファンの間で「新たな日常」として定着したことが収入減につながったとみられる。

英紙デイリー・メールは、「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」、「アバター: ウェイ・オブ・ウォーター」、「トップガン マーヴェリック」などのヒット作は、2022年の興行収入を押し上げるのに力強いけん引役を果たしたものの、全般的に〝不作の年〟だったと分析した。

同紙によると、興行収入自体は、コロナ禍の最中だった昨年と比べ68%増加しているものの、多くは、外出する必要がない配信での映画鑑賞が習慣化してきている。

今年に入り、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染拡大が減収の一因だとみられるが、ハリウッド関係者の多くは、期待した作品の売り上げが伸びなかったことが、最大の原因だと考えているようだ。

米国のインターネット視聴率や映画興行収入などを調査する市場分析専門会社コムスコアによると、クリスマスだった先週末の映画チケット売上は、23~25日までの3日間で8600万ドル(約114億2338万円)を計上。「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」がランキングトップだった昨年同期比で70%近く減少した。

今年のクリスマスの週末は「アバター: ウェイ・オブ・ウォーター」がランキングトップで、同3日間の売上は5600万ドル(約74億3400万円)だった。

一方、今年最大のヒット作「トップガン マーヴェリック」は、米国だけで7億1800万ドル(約953億円) を売り上げたが、全体的に映画会社は大苦戦していた。

パラマウント・ピクチャーズのブライアン・ロビンス最高経営責任者(CEO)は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「私たちはまだコロナ禍の混乱から抜け出したばかり。かろうじてゴールにたどり着いた映画がいくつかあるだけだ」と語った。

同社は今年の米国内興行リスト上位25作品のうち、「トップガン マーヴェリック」、「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」、「スマイル」、「ロスト・シティ」、「スクリーム」の5作品がランクインした。にもかかわらず、ロビンス氏は、現在の売り上げを見る限り、コロナ後の世界で潜在的な顧客が完全に戻ったとは言えないと述べた。

また、大物ハリウッドスターのネームバリューに頼って大コケした作品が相次いだ年でもあった。

マーゴット・ロビー、クリスチャン・ベール、ジョン・デヴィッド・ワシントンら人気俳優が共演した歴史コメディースリラー「アムステルダム」(デヴィッド・O・ラッセル監督)には、他にもラミ・マレックやロバート・デ・ニーロ、テイラー・スウィフトといった多くのスターが出演。にもかかわらず、10月7日公開から2か月半で同作の米国内売上は、わずか1400万ドル(約18億6000万円)。製作費は8000万ドル(約106億円)で、80億円を超える大赤字となっている。

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