注目ポイント
彰化市は台中と並ぶ台湾中部の中枢。歴史ある古都としてもその名を馳せている。そして、味を競う老舗がひしめく食の街でもある。この土地で育まれたご当地料理は個性豊かで、食べ歩きが楽しい。そういった食文化の背景にあるものとは?

おすすめの店は朝、昼、晩で変わる?
台湾中西部に位置する彰化市。台中市のすぐ南に隣接するこの都市は、三百年の歴史を誇り、随所に名刹や古跡、歴史的建造物が残る。時には清国統治時代の路地などもあり、昔ながらの風情に触れながらの散策が楽しめる。
彰化には味自慢の屋台や食堂がひしめいている。彰化の名物と言えば、まずは「焢肉飯(こんぱーぷん)」が挙げられる。これは煮込んだ豚肉をご飯に載せたというシンプルなもの。市内にはこれを看板に掲げた専門店が数多くあり、彰化を訪れた旅人はどこでこの名物を味わうべきなのか、誰もが迷ってしまうほどである。
筆者は以前、彰化の郷土文化やグルメに精通している陳俊德医師と出会い、おすすめを尋ねてみたことがある。すると、間髪をいれず、こんな問いが返ってきた。
「何時に行くのですか?」
想定外の回答に一瞬戸惑ってしまったが、これは店によって開いている時間帯が異なること。そして、人々の側も、早朝なのか午前なのか、昼ご飯なのか、夕食なのか、そして夜食なのかと、時間帯によって足を運ぶ店を変えるのだ。これは24時間、いつでもおいしい焢肉飯を味わえるということに他ならないが、その充実ぶりと熱意には圧倒される。

彰化の焢肉飯は使用する豚肉の部位が他都市とは異なる。台北では豚バラ肉(三枚肉)を用いることが多いが、彰化では皮付きの豚もも肉を用いることが多い。これは半円型に切られており、竹串がちょこんと刺さっているのが可愛らしい。
陳医師が昼に食べる「焢肉飯」のおすすめとして紹介してくれたのは、成功路にある「阿泉」という店だった。訪れたのは昼前だったが、すでに長い行列ができていた。ぐつぐつと煮込まれた豚肉は照りが良く、目にした瞬間から食欲がそそられる。そして、口に入れると、その瞬間から煮汁が溢れ出てくる。見た目とは異なり、油っこさは感じられず、癖もない。肉はキュッと引き締まっている印象で、ご飯もほど良い硬さ。煮汁と絡み合って独自の風味に仕上がっている。
ちなみに、この日は早起きして三民市場に近い「老朱」という店でも焢肉飯を食した。早朝から肉の塊を食べるというのは日本人には不慣れな印象を禁じえないが、ここのものは脂のギトギト感がなく、肉の色も薄めで、さっぱりとした味付け。朝に食べる焢肉飯は朝に合わせた風味に仕上がっているのだ。筆者が食している間にもひっきりなしに常連客が出入りしており、その人気と定着の度合いがうかがえた。
そのほか、夜には「阿章」、深夜には「阿正」といった人気店がある。それぞれ味わいが異なるので、食べ比べを楽しんでみよう。
