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2月24日にロシアによる侵攻が始まって以来、初めてウクライナを離れたゼレンスキー大統領は21日、米ワシントンに到着した。ホワイトハウスでバイデン氏と会談した後、米連邦議会で演説し、米国による軍事・経済支援などに謝意を示すとともに、これからも超党派による手厚い支援を継続するよう呼びかけた。一方、ロシアのプーチン大統領は新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)初の実戦配備を表明。西側をけん制する狙いとみられる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日午後(日本時間22日未明)、バイデン米大統領とホワイトハウスで会談。バイデン氏は、長距離の地対空ミサイル「パトリオット」1基を含む、総額18億5000万ドル(約2400億円)規模の追加の軍事支援を約束。ゼレンスキー氏は「戦争は終わっていない」として、支援継続を要請した。
首脳会談後の共同記者会見でバイデン氏は、「プーチン(ロシア大統領)がこの残酷な戦争をやめるつもりがないことはわかっている」とした上で、「米国は勇敢なウクライナ国民がロシアの侵略から自国を守り続けられるよう、可能な限りの支援を約束する」と述べた。
ゼレンスキー氏がこの時期に訪米を選んだ大きな理由は、来年1月から新たな米連邦議会が始まるからだ。中間選挙に敗れたバイデン氏の民主党は、下院で議席の過半数を失い、ウクライナへの巨額支援の見直しを求める野党・共和党が、年明けから下院の主導権を握る。そのため、これまで通りの支援が望めなくなる危機感から、新議会が始まる前に、バイデン氏から支援継続の約束を取り付けることが必要だった。
共同会見でゼレンスキー氏は、「米国は我々の価値と独立を守るために支援してくれるだろう」と強調。「議会が変化しても超党派で上下両院の支援を得られると信じている」と念を押した。
来年の議会で次期下院議長に就任するとみられる下院共和党トップのマッカーシー院内総務は、「ウクライナは重要だが白紙の小切手は切らない」とし、バイデン政権に支援見直しを迫っており、民主党が下院の主導権を握る現在とは事情が変化する可能性は高い。
英BBCによると、実際、米国の同盟国は、エネルギー価格の高騰と経済的困難を伴う、長く厳しい冬に直面している。米国でも、対ウクライナ支援に対する国民の支持は、依然として高いものの、戦争初期に比べると落ちている。最近の調査では、アメリカ人の3分の1がウクライナ支援の継続を支持しないと回答。半数はウクライナが「できるだけ早く」和平交渉をするべきだとしている。
だが、ゼレンスキー氏が軍事支援を渇望する背景には、年明けにもロシアが新たな大規模攻撃を計画しているとの情報がある。
ウクライナのレズニコフ国防相は、戦場で敗退続きのロシアが、新たな大攻勢を計画している証拠が積みあがっていると指摘。攻撃の時期として、ロシアで今年秋に部分動員された30万人の半数が訓練を終える2月になるとの見方を示した。