2022-12-22 政治・国際

W杯表彰式でメッシが着用して物議のアバヤ イスラエル紙がアラブ視点でその意味を解説

注目ポイント

18日に行われたカタール・サッカー・ワールドカップを締めくくる表彰式で、優勝したアルゼンチンのスーパースター、リオネル・メッシ選手(35)が、アラブの伝統的民族衣装アバヤを身にまとい、物議を醸した。それについてイスラエル紙ハアレツは今週、「メッシのアバヤが何か恐ろしいことでもあるのか」との論説記事を異例のアラブ視点から伝えた。

イスラエルの中道左派とされるハアレツ紙は、「メッシのアバヤ着用はカタールW杯で起きた最高の瞬間だった」とし、数十年ぶりにアラブ世界で最も重要なシンボルの一つがいまだ健在で、それが世界中に中継されたからだと説明した。

カタールの首長とFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長が、今大会のMVPであるメッシにアバヤ (一部のアラブ諸国ではビシュト)を着せた。すると、「アバヤの着用に同意したメッシと、西洋文化の壁を勇敢に打ち破ったカタールの首長に、西洋世界とイスラエルから、あたかも事前に用意された台本のセリフのような批判が降り注いだ」と同紙は報じた。

元英国サッカー代表のゲーリー・リネカー氏(62)は、メッシが優勝トロフィーを掲げている間、彼のユニホームがアバヤで覆われていたのは「残念」と述べた。また英紙デイリー・テレグラフは、「メッシは戸惑っていたが、とりあえず衣装をまとった。そのせいで、優勝トロフィーを高く掲げた時、数十億人が見守る中、彼のアルゼンチンのユニホームが隠れてしまった」とし、アバヤを着用させた行為を嘲笑した。

米ESPNのマーク・オグデン記者は、アバヤを着たメッシの写真を見て、「誰かが理髪店のマントのようなものをメッシに着させたため、全ての写真が台無しになった」とツイート(後に削除)した。当然、イスラエルのソーシャルメディア利用者の中には、アバヤと「ジェラバ」という別の種類のゆったりした衣服を混同しながら、侮辱的なメッセージを発信する者もいた。

カタール人にとっては重要な意思表示だったが、イスラエルや西側世界の反応は無知を再び反映したとハアレツ紙は批判。「アバヤはアラブ世界の文化と地位の重要な象徴であり、それを誰かに授ける行為は特別な儀式であり、尊敬の象徴なのだ。シェイクがアバヤを身に着けているとき、それは彼が家族全員と一族全体に責任を担っていることを示している」と解説した。

同紙は、「明らかに、メッシはなぜアバヤを与えられたのかを理解していなかったが、彼はカタールのゲストであり、ホストであるカタールの首長と観客席のアラブ人を尊重していた」とし、「例えば、メッシが巨大なグラスのビールやシャンパンを渡されていたとして、西側世界はメッシを攻撃し、中傷するだろうか?もちろん違うだろう」と指摘。アバヤへの批判は、それが西洋世界の目障りになったからだと記した。

「アラブ人は初の中東でのW杯の成功に努め、アラブ文化を紹介することさえできた。また、世界で最も注目を集めるスポーツイベントという舞台で、パレスチナ人との連帯も示した。エドワード・サイード(パレスチナ系の米文学研究者)が生きていたら、きっと笑顔でこう言ったであろう。『われわれは勝った。何年にも渡る(東洋を否定する)オリエンタリズム、抑圧、口封じ、アラブ文化無視を経て、われわれは晴れて戻ってきた』」と続けた。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい