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日本でも台湾でも一年の締めくくりとして、友だちや会社仲間、SNSのオフ会などが集まってお酒を飲む毎年恒例の風景が見られる。日本ではこの一年の嫌なことを忘れて心新たに新年を迎えるために無礼講の酒宴をする「忘年会」、台湾では土地の神様を祭る「牙祭」を一年最後の月、つまり「尾」である12月に盛大に慰労をする「尾牙(ウェイヤー)」である。台湾の尾牙と日本の忘年会、何がどう違うのだろうか。
ここ数年はコロナで自粛ムードだった尾牙だが、去年あたりから徐々に元の状態に戻り始めた。台北市にある日系大手銀行では12月中旬に行員約150人出席の尾牙がホテルのレストランを貸し切って開かれた。恒例の抽選会では一等賞品に最新型スマホが用意された。ある法律事務所の尾牙は出席者約800人で、宴が始まるまでの待ち時間で最新テクノロジーを駆使したフィルター付きフォトやARゲーム、或いはガチャガチャなどのレトロなゲームなどをして遊ぶ。歌手も呼ばれ歌を披露した。最近の台湾の一般的な尾牙では豪華な食事とウーロン茶やジュース、ビール、紹興酒、ウイスキーなどの飲み物が提供されるが、泥酔するほど飲む人はあまりいなくて、みんな様々なイベントを楽しむ。各種ゲーム、マジックショー、ビンゴゲーム、カラオケ、上司や同僚の物まね大会、逃げ恥ダンス披露(ちょっと古い…)、そしてイベントの目玉、豪華賞品が当たる抽選会である。筆者も以前実際に電子レンジが当たったことがある。また、尾牙には歌手や芸能人、政治家やスポーツ選手などの著名人も招待される。筆者の友人が務めていた会計事務所の尾牙は、ナイトクラブ風に趣向が凝らされていて、抽選くじの賞品は、車、10万元の現金、日本台湾往復航空券とREMOWAのスーツケースで、招待された歌手は林宥嘉、彭佳慧、林曉培、蔡依林、蕭煌奇という前代未聞の豪華さであった。また、大手食品会社では、普段はポロシャツにジャケットという格好で出勤する社員も尾牙の日だけはワイシャツに背広で出勤する。

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このように日本と違って台湾の忘年会は酒宴というより総合イベントパーティーに近い。日本では居酒屋或いは貸し切りの座敷に集まって上司の乾杯の音頭で宴が始まるのだが、台湾の尾牙は昔と違ってしっかりと考えられた式次第に沿ってシステマティックに進行していく形に進化した。
日本同様、台湾でもコロナ禍でオンライン忘年会をするところもある。六角国際、緯創、仁宝,富邦グループなどは来年1月に尾牙を行うことにしているが、ASUSは実体尾牙をやめて従業員に一律1万元の年末ボーナスを出すことを検討している。
コロナの蔓延でエンタメ業界やイベント業者・関係者、芸能界は2020年初頭から仕事が徐々に減り始めた。今年は年末のこの時期からすでに歌手、タレント、プロの司会者たちはそわそわしながらスケジュール表に営業の予約を書き入れ始めている。彼らにとって久しぶりに開かれる多くの企業の尾牙は掻き入れ時だからである。