2022-12-20 流台湾

日本人は台湾で忘年会を二度やる―「尾牙」と忘年会の違い―

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注目ポイント

日本でも台湾でも一年の締めくくりとして、友だちや会社仲間、SNSのオフ会などが集まってお酒を飲む毎年恒例の風景が見られる。日本ではこの一年の嫌なことを忘れて心新たに新年を迎えるために無礼講の酒宴をする「忘年会」、台湾では土地の神様を祭る「牙祭」を一年最後の月、つまり「尾」である12月に盛大に慰労をする「尾牙(ウェイヤー)」である。台湾の尾牙と日本の忘年会、何がどう違うのだろうか。

今年も忘年会のシーズンがやってきた

先週末、日本のあちこちで忘年会が行われ、酔いつぶれた会社員が最終電車で寝過ごし、終着駅で立ち往生してフラフラしているというニュースを見た。いよいよ今年も忘年会の季節がやってきた。今年は数年ぶりにコロナによる行動制限や規制が緩和され、コロナ前の忘年会に戻りつつあるように見える。台湾では、春節、端午節、中秋節(これを三大節句という)は旧暦で行われる。2023年の春節(旧暦の1月1日)は新暦の1月22日にあたる。台湾の忘年会は2023年1月7日土曜日(旧暦12月16日)である。ただ、台湾の一部企業や日系企業、日本人駐在員は年内に忘年会をするところが多い。日本人駐在員にとって12月は忘年会、1月は新年会、旧正月前は台湾式忘年会で、特に酒量と出費が増える時期である。台北在住の日本人グループが年明け(たいていの場合旧暦では年末になる)に集まって新年会をするが、乾杯の音頭をとるときに「本日は新年会…いや忘年会にお集まりいただき…」とあいさつするのがお決まりのジョークになっているところもある。

台湾式忘年会「尾牙」は趣向が大きく違っていて、もちろんお酒も飲むが、酒宴がメインではない。

台湾の忘年会「尾牙」

南福建省や台湾では、食べる(咀嚼)ために大切で丈夫な「歯(中国語では牙という)」が作れることを祈って毎月2日と16日(旧暦)に土地の神様-土地公を礼拝してきた。12月は一年最後の月だから、最後を表す「尾」と歯を表す「牙」を組み合わせて12月16日が「尾牙」と言われるようになった。商店の経営者は従業員に、土地公にお供えした肉などの食べ物を分け、歌や踊りや手品などのショーやくじ引きなどで従業員を楽しませ慰労した。これが台湾式忘年会「尾牙」の始まりである。また、尾牙は一年締めくくりの月だから人員整理も行われる。ということで、経営者が用意した鶏料理の頭を向けられた従業員は年明けからは来なくてもよい、つまり首にするという言い伝えも根深く残っている。でも実際に見たことがある人は一人もいない。今では会社や店、団体、組合などは都合の良い曜日を選び、旧暦12月16日前後に盛大なパーティーを開く。また尾牙に「刈包(クアパオ)」を食すのも古くからある風習である。長崎の中華街では「角煮饅頭」、台湾の日本語メニューでは「台湾ハンバーガー」と呼ばれ、白い蒸しパンに豚の角煮を挟んで食べるもので、その形状がいっぱいに詰まった財布に見えることから商人にとって縁起がいい食べ物とされている。

「尾牙」は一大イベント

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