注目ポイント
9月以来、イラン全土に拡大している反体制デモに関与したとして男性が処刑されたことをSNSで批判した同国を代表する有名女優が逮捕された。さらに、国内リーグでプレーするサッカー選手はデモに参加したとして「反逆罪」で死刑が宣告された。保守強硬派のエブラヒム・ライシ師(62)が主導する政権に反抗的な著名人の身柄を相次いで拘束することで、見せしめ効果を狙ったものとみられる。
2017年に米アカデミー賞外国映画賞を受賞した映画「セールスマン」で主演したタラネ・アリドゥスティさん(38)は今月、反スカーフデモに関与したとしてモーセン・シェカリ被告が絞首刑に処されたことをインスタグラムで抗議したことで、「偽情報を広めて反体制運動を支援した」として身柄を拘束された。
処刑されたシャカリ被告は9月23日にテヘランで行われた抗議行動で、イスラム革命防衛隊の民兵部隊のメンバーを刃物で刺した容疑で起訴され、「神に対して武力を行使した」として極刑が言い渡された。
アリドゥスティさんの逮捕理由について国営ファルズ通信は、インスタに投稿した「主張には根拠がない」ためだと伝えた。
フェミニスト活動家としても知られるアリドゥスティさんは先月、抗議運動への支持を示すため、イスラム教のヒジャブ(女性に課せられたスカーフ)を身に着けずに、「女性、生命、自由」と書かれたボードを持つ自身の写真をインスタに投稿した。
シェカリ被告が処刑された後、アリドゥスティさんは別の投稿で、「あなたの沈黙は専制政治と専制君主を支持することを意味します」とした上で、「この流血を見て行動を起こさない全ての国際機関は人類への恥辱です」と訴えた。彼女のインスタアカウントはその後、削除された。
イランのNGO「イラン映画界で女性への暴力に立ち向かう委員会」は、どの政府機関がアリドゥスティさんの身柄を拘束しているか不明だとツイートした。さまざまな人気番組に出演しているアリドゥスティさんは、イランの映画業界で「MeToo」運動に積極的に参加していることでも知られている。
そんなアリドゥスティさんは先月、自分がイランを離れたという報道を否定しイランに留まり、仕事をやめるつもりだと投稿していた。「私は囚人と殺害された人の家族を支持し、彼らへの正義を求めます。私は家族のために戦い、自分の権利を守るため、どんな苦労も惜しまない」と記していた。
そんな中、シェカリ被告が処刑から数日後の12日、2回目の処刑が行われた。2人の民兵隊将校を殺害したとして告発されたマジドレザ・ラナバード被告が、イラン北東部の都市マシュハドで絞首刑に処されたのだ。
イランでは、ヒジャブを適切に着用していなかったとして倫理警察に逮捕された22歳のマサ・アミニさんが、当局から暴行を受けて死亡したと伝えられたことをきっかけに、全国的な抗議デモに発展。すでに数人のイラン人が死刑を宣告された。