2022-12-16 政治・国際

ヒトの〝親戚〟数十万年前すでに火を使用か 南アの洞窟からすすけた壁や囲炉裏など発見

© Reuters /達志影像 Homo naledi skull

注目ポイント

「人類のゆりかご」として知られる南アフリカの人類化石遺跡群にある洞窟から、ヒト属の絶滅種「ホモ・ナレディ」の骨が大量に発見されたのは2013年。脳の大きさが現生人類(ホモ・サピエンス)の3分の1程度だったホモ・ナレディが、数十万年前、火を明かりや調理に使っていた可能性が高まったと著名な古人類学者がこのほど明らかにした。

ところが、その過程は、実はもっと複雑だったことを示す証拠が出てきているという。例えば、この小さな脳のホモ・ナレディが、実際に火を使用するのに十分なほど進歩していた可能性だ。

一方、ワシントン・ポスト紙によると、バーガー氏はワシントンでの講演で洞窟の写真は提示したが、炭素年代測定法やその他の伝統的な科学的技法を使っていないため、ホモ・ナレディに関するいくつかの過去の報告と同様、専門家らからは批判を集めている。

バーガー氏に批判的な米カリフォルニア大学バークレー校人間進化研究センターのティム・D・ホワイト所長は「南アの洞窟での火の使用についての仮説は、長い歴史がある」とした上で、「(バーガー氏のように)科学的データではなくプレスリリースを介しての火の使用に関する主張の場合は、かなり懐疑的に受け取られる」と指摘した。

例えば、2012年、ある考古学者は前衛的な技術を使い、「南アのワンダーワーク洞窟から約100万年前に焼かれた骨と、灰になった植物の跡が発見され、これは火を使っていたことを示す明白な証拠」だと報告した。批評家はその年代推定に疑問を呈し、科学者は「宇宙線照射生成核種年代測定法」と呼ばれる複雑な技術を使用した結果、時代を「古くとも10万年前」に修正した。

ホワイト所長は、バーガー氏が火の使用の証拠とホモ・ナレディの骨の両方が同じ時代のものであることを立証するためには、厳密な調査によって両方の年代を特定する必要があると指摘。また、煤とされる物質が実際に煤であり、化学物質やその他の要因による変色ではないことを立証する必要があるとも主張した。

バーガー氏自身、直面している主要な課題は年代測定であることを認めている。これまでのところ、ホモ・ナレディの骨は23万年~33万年前のものとされているが、これらの年代はこの種の初期または最後の時期の出土と見なすべきではないと強調する。

ホワイト氏にとって、洞窟で発見された石器の欠如がバーガー氏の仮設を最も懐疑的にとらえる理由のようだ。当然、考古学者は、ホモ・ナレディが照明や料理に火を使っていた場所で、何千もの石器が発見されるはずだと推測する。だが、「現段階で、囲炉裏のあった場所で石器は発見されなかった」とバーガー氏はワシントン・ポスト紙に語り、「奇妙なこと」だと付け加えた。

それでもバーガー氏はワシントンでの講演でこう語った。「湿った洞窟の250メートルも奥で勝手に火はつかない。また、動物もあえて火に近づき、焼かれてしまうことはない」とし、ホモ・ナレディが火を調理などに使っていたことを強く示唆した。石器は洞窟の外で発見されているとした。

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