注目ポイント
「人類のゆりかご」として知られる南アフリカの人類化石遺跡群にある洞窟から、ヒト属の絶滅種「ホモ・ナレディ」の骨が大量に発見されたのは2013年。脳の大きさが現生人類(ホモ・サピエンス)の3分の1程度だったホモ・ナレディが、数十万年前、火を明かりや調理に使っていた可能性が高まったと著名な古人類学者がこのほど明らかにした。
闇夜を照らし、夜間の行動も可能にした火の使用は、人類の進化の上で画期的な出来事だった。2004年にイスラエル北部ゲシャー・ベノット・ヤーコブ遺跡での調査では、78万年前のヒト属ホモ・エレクトス(旧名ピテカントロプス・エレクトス)が、既に火をおこして生活していたと考えられている。
南アフリカの古人類学者でナショナルジオグラフィックの探検家でもあるリー・バーガー教授(56)の研究チームは今年夏、煤(すす)で覆われた壁、木炭の破片、焦げたカモシカの骨、囲炉裏のように配置された岩を、南アの人類化石遺跡群にある「ライジングスター洞窟」で発見した。この洞窟は13年に同チームがホモ・ナレディと名付けられた新たな人類の〝親戚〟の骨を発掘したのと同じ場所だ。
火の使用は、暗い場所を移動するための光となり、夜間の活動を可能にした。また、食物を調理することで体格の変化にもつながった。だが、その確かな時期がいつだったのかは、古人類学で今最も熱い争点の一つだ。
南ア・ヨハネスブルグにあるウィットウォーターズランド大学のバーガー教授は、今回の発見を科学ジャーナルではなく、プレスリリースと今月1日の米ワシントンにあるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念館での講演で発表した。
米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、バーガー氏は、「私たちはおそらく別の種の文化を見ている」と述べ、ホモ・ナレディが独自の進化を歩んでいた可能性を示唆した。正式な論文は現在審査中で、「来月にかけて一連の重要な発見がある」と語った。
同氏の研究チームは、この夏に発見した1500片に上る化石骨を発表した際、すでに重要な疑問を提起していた。それは、いかにしてこの古人類が、地下30~40メートルに位置する「恐ろしく危険な」洞窟にたどり着いたのかということだ。
研究チームはホモ・ナレディが、張り巡らされた洞窟の部屋で、小さな明かりを使って通路を照らしたと考えている。その洞窟内の通路を通るには、バーガー氏は自分なら25キロは減量する必要があるとし、その狭さを強調した。
さらにバーガー氏は、大きめのオレンジを少し上回る程度のサイズの脳しかなかったホモ・サピエンスの〝親戚〟ホモ・ナレディによる火の使用は、これまでの人類の進化に関する従来の説をひっくり返すと主張する。
何年もの間、専門家は人類の進化を「はしごを上る」ように描写してきた。これは、より大きな脳と、より優れた知性を持つ種に向かって常に上昇移動し、より小さな脳の種を淘汰することだった。