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米連邦議会で、先週可決した同性婚の権利を連邦レベルで擁護する「結婚尊重法案」をバイデン大統領(民主党)は13日署名し、同法が成立した。前政権のトランプ大統領(共和党)が進めた最高裁の保守化により、同性婚の憲法上の権利を認めた2015年の判例を覆したとしても、その権利が守られるよう現政権が法制化したものだ。
バイデン大統領による「結婚尊重法案」の署名式が13日、ホワイトハウスで執り行われ、隣接する芝生広場「サウスローン」では、LGBTQの権利や「結婚尊重法案」を支持する歌手シンディ・ローパーやサム・スミスがミニコンサートを開き、同法案に賛成した民主・共和超党派の議員や市民ら5300人(ホワイトハウス発表)が集まり、法案の成立を祝った。
「アメリカ国民のみなさん、ここまでの道のりは長かった。しかし、平等や正義を信じてきた人たちは決してあきらめなかった」とバイデン氏は署名式を前に、群衆にそう語りかけ、「われわれは成し遂げた。これからも継続していくことを約束する」と誓った。
連邦議会下院は8日、同法案を民主・共和両党の超党派により、賛成2258、反対169で可決。上院は先月29日に賛成61、反対36で通過していた。
同法は、同性婚や異人種間の結婚など、全ての州で合法に行われたあらゆる結婚について、連邦政府がその有効性を定めた。さらに、ある州で合法的に行われた結婚の有効性を、他州でも認めるよう義務付けている。ただし、保守派に配慮し、各州に同性婚の合法化は求めなかった。
8日の可決を受け、下院のナンシー・ペロシ議長(民主党)は、「大多数のアメリカ人が大切に思う価値観をかなえるために、私たちは立ち上がった。人間2人を結びつける強い愛を永遠に尊重し、全ての人の尊厳と美しさと神性を信じるという、大切な価値観のために」と述べた。
民主党のバイデン政権が今回の法制化を進めた大きなきっかけは、今年6月に連邦最高裁が、人工妊娠中絶の憲法上の権利を認めた1973年の判決を覆したことだ。前政権時、トランプ大統領は死亡や引退した最高裁判事の後任に保守派判事3人を送り込み、全9人の判事中、6人が保守派となった。
6月の判決の背景にあるのは、トランプ氏の強力な支持基盤であるキリスト教福音派が中絶禁止を悲願とし、トランプ氏自身も選挙前から公約としてきたことだった。
同判決で、中絶権の合憲性を否定した最高裁判事の1人、クラレンス・トーマス判事は賛成意見として、「将来的には、この法廷のこれまでの実体的適正手続きの先例を全て再検討すべき。これには、グリスウォルド、ローレンス、オバージフェルも含まれる」と記した。グリスウォルド、ローレンス、オバージフェルとは、3つの画期的な判例の名称で、「避妊の権利の保障」「ソドミー(肛門性交)禁止の撤廃」「同性婚の合法化」を示したもので、それらを覆すべきとする意見だ。