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被雇用者が有利な労働法に、台湾人でも困難な銀行の融資、物件の賃料の高さなど、日本人起業家も台湾人経営者も悩みの種である「台湾での経営」について、台湾で唯一の日本人による花屋を開業した経営者が解説。
台湾と日本では、起業の方法や起業後の経営のやり方も全く異なる。多くの日本人が台湾で起業しているが、日本人経営者たちと会話をしていると必ずと言っていいほど、同じような案件で問題を抱えていたり悩んでいる場合が多い。今回は、台湾で起業した日本人として、経営をする上で大変なことについてご紹介していく。
台湾の労働法は労働者に有利
台湾の場合、雇用者と労働者では圧倒的に労働者側が有利な法律となっている。実際に、日本であれば労働者側に非がある場合でも、台湾では雇用者側に問題があると裁判や調停で判断されるケースも多い。そのため自己主張の強い台湾人は上司や会社を日本よりも簡単に訴える傾向がある。私の知り合いの経営者には、常に労働者との裁判をいくつも抱えている人もいる。労働関係のトラブルは時間的、金銭的にも負担が大きく、日常業務にも支障をきたすことから、なるべく避けたい問題である。
私もしばしばスタッフとトラブルになることがある。その多くの問題は賃金や業務内容に関することだ。台湾人は仕事の内容や職場の人間関係よりも、自身の給与や待遇を優先する傾向がある。もちろん、人による部分もあるがもし給与や待遇面で不満を抱えていれば、すぐに会社を辞めてしまう。台湾では転職は悪いイメージはあまりなく、中途採用も非常に多いため終身雇用という概念はあまりないからだ。長く働いてくれる人材を獲得するには、満足のいく担当業務と待遇を設定しなければいけない。
また、労働法のいうところの労使関係は、決して正社員だけに適用されるものではない。アルバイトでも、お手伝いでも、金銭の移動がある委託については全てが労使関係と見做される。そのため、これから台湾で起業しようとしている日本人や、何か台湾人に金銭を払って協力してもらいたい場合などには、必ず労働契約を結び労働法には全て目を通しておくことを強くお勧めする。
銀行の融資は基本的に受けられない
日本では会社や店を開業するには、銀行などの金融機関から融資を受けることが一般的だ。自己資金だけで開業する人はそれほど多くないだろう。だが、台湾で起業する場合、まず外国人は融資を受けられないことを覚悟しておいた方が良い。台湾人であっても審査は厳しく、大手企業の子会社設立や移転、金銭的富裕層や不動産を持っているなどでないと融資を受けるのは難しい。たとえ融資を受けられたとしても少額だろう。
そのため、台湾では日本人が1から起業するなら、自己資金を使用するか、別の投資人がいる場合がほとんどだ。台湾は投資が盛んで若い投資家も多い。ビジネス的に将来性が望める事業であるなら、投資をしてくれる人は見つかるかもしれない。また、義理や縁を大切にする文化のため、人脈は日本よりも重要なものとなってくる。多くの台湾人と積極的にコミュニケーションをとり、人脈を増やしておくことが台湾で成功するカギとなってくるだろう。